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高校野球史に残る大会に……。
東北勢も参加したセンバツ大会展望。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2011/03/22 13:20
学校関係者や応援する地元のファンに送られ甲子園に向かった東北高校のナインたち。甲子園へ赴く選手以外の野球部員は、被災地での活動に参加している
創部1年目、下級生だけで出場の創志学園の戦いぶりは?
被災地同士の対決、水城(茨城)vs.光星学院(青森)のブロックも実力校がそろう。
光星学院は2年生スラッガーの田村龍弘が注目。昨秋の東北大会では1試合3本塁打の離れ業をやってのけた。出身校が同じということで、巨人の坂本2世との評判である。
そのほか、智弁和歌山(和歌山)、履正社(大阪)ら近畿の強豪が待ち構える。
タイプの違った3枚の投手と持ち前の打撃力が売りの智弁和歌山は今年も健在。投手兼4番の宮川祐輝は注目だ。
履正社は近畿トップクラスの攻撃力が持ち味。1番の海部大斗はバットコントロールの巧さが光り、石井元・坂本誠志郎らドラフト候補生を引っ張る。
この他では、創部1年目、下級生ばかりで出場する創志学園(岡山)の戦いぶりも楽しみだ。同ブロックにはエース・三好匠らタレントぞろいの九州国際大付(福岡)が挑戦を待ちうける。西口輔、中谷佳太のダブルエースで近畿大会を制した天理は、接戦に強い戦いぶりが際立っている。
先述した浦和学院vs.鹿児島実、大垣日大vs.東北、関西vs.東海大相模も同ブロック。ここに常連・報徳学園も加わり、どこが勝ち上がるか予想が付かない。
被災地で救援活動を続けていた東北高校が参加してくれた意義。
開催が危ぶまれただけに、待ち望まれた今年は白熱した戦いを大いに期待したい。
とはいえ、震災後間もなく開催される今大会は例年とは一味違った雰囲気の中で行われることは間違いない。被災地で救援活動をしていた東北が心身共に安定しない中で大会出場に踏み切った心意気は出場校すべてが肝に銘じなければならない。彼らの出場なくして、今大会の開催はなかったはずだからだ。東北だけでなく、同じく震災の被害をうけた水城、光星学院、東北地区の大館鳳鳴(秋田)なども、よく大会に出てくれたと思う。
智弁和歌山の高嶋仁監督は「大会が開催される限りはやってよかったなと思ってもらえるような大会にせんとアカンでしょう。どの監督も思っていること」と神妙に語り、5季連続出場の天理を率いる森川芳夫監督も「高校野球について考えさせられる大会になると思う。全力でやることはもちろんですが、失礼のないように、僕たちが試合の中で何ができるか考えたい」と気を引き締めている。
実際問題、大会開催への風当たりは厳しいものだろう。
筆者はツイッターをやっているが、開催が決まった時、「高校野球だけズルイ」というつぶやきを目にした。高校スポーツの中には、全国大会出場を認められながら、震災でやむなく中止に追い込まれた競技も多く、球児と同じ高校生は涙に暮れているのだ。