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高校野球史に残る大会に……。
東北勢も参加したセンバツ大会展望。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2011/03/22 13:20
学校関係者や応援する地元のファンに送られ甲子園に向かった東北高校のナインたち。甲子園へ赴く選手以外の野球部員は、被災地での活動に参加している
第83回選抜高校野球大会が予定どおり開催される。
東北地方太平洋沖地震の被害を考慮して中止も考えられたが、「高校球児が真剣にプレーする姿が、被災者のみならず日本国民にとって一筋の光になればいい」という日本高校野球連盟・奥島孝康会長の声のもと、決行することになった。大会の開催についての賛否両論は様々あるだろうが、実施が決まった以上、報道をする側としては前向きにとらえたい。
トーナメント表を見て、例年と少し違った傾向を感じるのは関東勢vs.近畿勢の対決が一つもないという点だ。
センバツは例年、初戦から注目カードが多く、その中心となってきたのは地元の近畿勢だった。例えば、昨年は天理(奈良)が開幕試合で登場、神戸国際大付(兵庫)が帝京(東京)、大阪桐蔭(大阪)が東海大望洋(千葉)と対峙した。もちろん、今年の対戦校に力がないというわけではないが、序盤の注目カードに近畿勢はいない。
そんな今大会での屈指の対決といえば、日大三(東京)vs.明徳義塾(高知)だろう。
日大三vs.明徳義塾という因縁対決に注目!!
昨秋の神宮大会優勝校と四国大会覇者の対戦というだけでなく、この両者には因縁がある。
実は'05年の夏にも初戦で組まれたが、抽選会直後に明徳義塾の不祥事が発覚し、急転、大会を辞退した。伝統も、実力も、監督の実績もある強豪同士の対決は実現がかなわなかったのだ。
「対戦できなかったが、あの時は(日大三と)当たる気がしていた。今回もそんな気がしとった」と報道陣の笑いを誘った馬淵史郎監督は「今大会で一番強いチームと一番弱いチームの対戦」と初戦での激突に苦笑いを浮かべる。とはいえ、馬淵監督は過去20大会、初戦で敗れたことがなく「選手の調整は順当にきとるよ」と胸を借りるつもりは毛頭ない。プロ注目のスラッガー北川倫太郎をチームの軸に、負けない野球で優勝候補撃破をもくろんでいる。
一方の日大三は、言わずと知れた今大会の優勝候補No.1だ。エースの吉永健太朗は147キロを投げ込む本格派右腕で、打線も横尾俊建、畔上翔ら昨春準優勝メンバーが名を連ね、投打に力強い。昨年、決勝まで勝ち上がったという絶対的な経験は、同じ優勝候補とはいえ、明徳義塾を凌駕するものだ。
「こういう状況の中で開催されるわけだからね、勇気を持ってもらえるような試合を見せたい。いつも、一生懸命やるようにいっていますが、それ以上にいい戦いができたらいいなと思います」と日大三・小倉全由監督が言えば、「(初戦の連勝は)いつかは止まるもんよ。でも、お互いの力の差があってもその通りにいかんのが高校野球の面白いところやからのぉ」とほくそ笑んだ馬淵監督。
大会随一の好カードは3日目の第1試合プレーボール。