博多の人・王貞治BACK NUMBER
「五輪よりWBCよりMLBより凄かった」ON決戦の大舞台で…流れを変えた“ワンプレー”と主砲を襲った致命的アクシデント「今も悔いしかない」
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byNaoya Sanuki
posted2026/09/30 17:02
野球のあらゆるイベントを目にしてきた選手たちが驚愕するほどの注目を集めた「ON決戦」を前にした両雄
しかし、変則日程のシリーズは、東京から福岡へ移動した23日に福岡ドームで第3戦が組まれていた。時間的にも慌ただしく、肉体的にも負担の大きい“移動ゲーム”と呼ばれるこの一戦で、シリーズの流れを変えたとも言われるビッグプレーが長嶋巨人に飛び出したのは、2回の守備でのことだった。
巨人は2回に3点を先制しながら、その裏、ダイエーが城島の3戦連続本塁打に続き、2死二、三塁から1番・柴原洋が右翼線突破の2点二塁打を放つなど、あっさりと3-3の同点に追いつかれていた。
さらに2死二塁となり、ダイエーの勝ち越し機。ここで2番・村松有人は、巨人先発・上原浩治のストレートを強振。打球は一、二塁間を襲った。
仁志の好判断で流れが変わった
ADVERTISEMENT
セカンドの仁志が、身を挺して打球を押さえた。しかし、盗塁王のタイトルを獲ったこともある左打者の村松ゆえに、一塁でアウトにするのもギリギリのタイミング。2死だから二走・柴原は、打球が飛んだ瞬間にスタートを切っている。しかも柴原はチーム内でもトップクラスの俊足を誇り、生還できれば勝ち越しの4点目が入る。
三塁ベースを勢いよく、柴原が回った。
すると仁志は、一塁ではなく本塁へ送球した。スキを突いた走塁のはずが、瞬時の判断に長けた仁志の本塁送球で、柴原は本塁手前でアウトになった。
勝ち越して、さらにチャンス継続のはずが一転、まさかの同点止まりだ。
ピンチの後に、チャンスありとはよく言ったものだ。直後の3回、巨人は打者9人の猛攻で、5本の長短打を連ねて4点を奪って勝ち越しに成功。さらに7回、松井の2号2ランでダメ押し。巨人が9-3の大勝でシリーズ初勝利。通算1勝2敗となった。
巻き返しの機運が高まった長嶋巨人とは対照的に、王ダイエーには致命的ともいえるアクシデントが起こっていた。
「僕は、あのON決戦に関しては、もう悔いしかないですね」
主砲・小久保裕紀の左わき腹が、悲鳴を上げていたのだ。
〈つづく〉


