博多の人・王貞治BACK NUMBER
「王さんは、ジャイアンツの在籍をもうホークスで超えた」“巨人・王貞治”から“博多の人・王貞治”への32年…屈辱のスタートと苦難の道のりとは
posted2026/06/25 11:00
「王貞治レガシーデー」にて、ホークスレジェンドたちとともに万感の思いを語った王
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph by
Sankei Shimbun
JR博多駅は、新幹線と在来線の発着駅であるがゆえに、改札口周辺のコンコースは常に、多くの人たちでごった返している。こんなところで立ち止まるのは迷惑だろうと、内心では申し訳ない思いを抱きながら、私はつい、その人込みの中で足を止めていた。
スマートフォンのカメラを掲げ、ピントを合わせながら後ずさりすると、案の定、歩いて来る人とぶつかりそうになり、その度に頭を下げる羽目になった。
目の前の柱には、どうしても撮って残しておきたい画像が、次々と映し出されていた。
王貞治に占拠された博多駅
ADVERTISEMENT
王貞治レガシーデー。
2026年5月24日の日本ハム戦に行われる一大セレモニーへ向け、博多の街中にその機運をさらに高めるべく、ソフトバンク球団は大々的なPR作戦を仕掛けていた。
私が新幹線を降りて博多駅の改札を出るや否や、突如、あの見慣れた“89の背中”が目に入ってきた。改札口周辺のコンコースに据え付けられていたすべてのデジタルサイネージが、王貞治に“占拠”されていたのだ。
それらは、監督時代の王と、博多の人々の日常を組み合わせたイメージ広告だった。
私が最も博多らしさを感じたのは、毎年7月に行われる一大イベント「博多山笠」のワンシーンで、画像の上半分は法被と締め込み姿の男衆、その下半分は王が左手を伸ばしている姿で、画面にかぶせられた文字は「前進」だ。躍動感と力強さの両方が伝わってくるそれらの画像は、数秒ごとに、違うバージョンへと切り替わっていく。
「挑戦」「準備」「氣力」
それらは、監督時代の王が選手たちに向かって何度となく繰り返していたキーフレーズであり、「氣力」の『氣』は、王がサイン色紙に添え書きするときに記す旧字体だ。


