博多の人・王貞治BACK NUMBER
「普通、そんな考えにならないですよ」生卵を投げつけられた王貞治がチームに伝えた衝撃の“神発言”とは…「彼らには、良心があったんだよ」
posted2026/07/10 11:08
ファンに卵を投げつけられるという衝撃の事件後のミーティングで王が発した訓示に、若田部や小久保ら選手たちは驚愕した
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph by
Hideki Sugiyama
2026年、ソフトバンクの1軍投手コーチを務めている若田部健一は当時、5年目のシーズンを迎えていた。ルーキーイヤーの1992年、かつての本拠地・平和台球場のラストゲームは10月1日の近鉄戦。ここで、後にメジャーで大活躍する野茂英雄との投手戦を1-0で制しての完封勝利を収めた。福岡ドーム開業の1993年、今度はダイエーの福岡ドーム公式戦初勝利は、4月18日の近鉄戦で若田部が先発して勝ち投手になっている。
歴史の節目にその名を刻む若きエース右腕は、それまでの4年間で2度の2桁勝利を含む26勝を挙げていたが、1996年は2勝止まり。あの「生卵事件」の5月9日は、ビハインドの展開での4番手として登板していたのだが「えー? そこは、全然覚えてないですね」。
投げた事実の記憶よりも、どうも、試合後の衝撃の方が大き過ぎたようだ。
なんでそんなことをするんだ?
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「日生球場にいて、卵が飛んできたのは目の当たりにしています。バスに乗る前から、乗るまでの通路で卵が飛んできて、よけて。『あー、来た来た』って、そんな感じでした。大きな出来事でしたね。ショックというよりも『なんで?』と思いました」
どうしてそんなことをするんだ? やり過ぎじゃないのか? その若田部の思いは、別に咎められるものではない。むしろ、それが自然な反応だろう。
宿舎に到着すると、憤怒の熱も冷めやらぬまま、若田部はミーティングに向かった。
彼らは、本気で怒っているんだ——。
「卵を投げてくれるファンが、本当のファンだ、って言っていました。すごいなと思いました。怒るより、ファンの方を気にするんですから。印象的ですよね。プロとして何か、正されたような気がしました。やっぱりプロは、ファンのことを思うのが肝心なんだと」

