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「野村克也がここまで言うとは…」菅野智之の“意外な評価”…入団拒否、巨人で無双、メジャーで活躍「じつは大学時代157キロ投げていた」菅野の半生
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太田俊明Toshiaki Ota
photograph byJIJI PRESS
posted2025/06/20 06:00
プロ1年目の菅野智之(2013年撮影)。35歳の現在は米・オリオールズでプレー
野村克也の意外な評価
〈普段は辛口評論の私も、文句のつけようのないのが巨人の菅野智之だ。毎回“これぞエース”と唸るような投球を見せられる。(中略)自分有利のカウントに持ち込み、バッターを自在に料理する。ピッチングのお手本といえる〉
野村にここまで言わせた菅野は、投球術を極めた完成された投手として海を渡っていき、その投球術がメジャーでも通用することを証明した。
さて、当企画の現チャンピオン尾崎行雄とのベストシーズン対決である。菅野のベストシーズンは、タイトル数では翌18年に劣るも、投手成績の各項目で上回る2017年になる。(赤字はリーグ最高、太字は生涯自己最高)
「昭和の剛腕」vs「令和の精密機械」
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【1965年の尾崎】登板61、完投26、完封6、勝敗27-12、勝率.692、投球回378.0、被安打261、奪三振259、与四球63、防御率1.88、WHIP0.86
【2017年の菅野】登板25、完投6、完封4、勝敗17-5、勝率.773、投球回187.1、被安打129、奪三振171、与四球31、防御率1.59、WHIP0.86
沢村賞の選考基準になっている登板数、完投数、投球回は、尾崎が圧倒的にリードしているが、これは時代の違いによるものなので、ここでは重視しない。
当企画で重視している“打者圧倒度”を比較してみよう。1試合(9イニング、以下同)当たりの被安打数は、尾崎の6.21に対して菅野は6.20とほぼ互角。1試合当たりの奪三振数は、尾崎の6.17に対して菅野が8.22と、菅野リード。
防御率も、尾崎1.88に対して、菅野1.59と菅野リード。WHIP(1イニングあたりに投手が出塁を許した平均数)はともに0.86。1試合当たりの与四球は、尾崎が1.50という驚異的な数字だが、菅野も1.49でほぼ互角……。
日本プロ野球史上最も球が速かったと言われる昭和の剛腕と、令和の精密機械が、各項目でほぼ互角というのも不思議な気がするが、奪三振率と防御率で上回った菅野に軍配を上げたい。連載2回続けて新チャンピオンの誕生である。
菅野の2017年が、これまで見てきた偉大な投手の中で最高というのもやや意外に感じるが、この年の菅野は、あの田中将大の24勝無敗の奇跡の1年の数字と比較しても、1試合当たりの被安打数、奪三振数、WHIPで勝っている。野村の言う「ピッチングのお手本」を示した1年と言えるだろう。


