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金田正一「弱小チームで31勝」か、田中将大「勝率10割の24勝」か…もし同年の記録なら“どちらが沢村賞”? 無理を承知で決めてみた
posted2022/05/20 11:03
text by
太田俊明Toshiaki Ota
photograph by
Nanae Suzuki
時代の異なる大投手たちの“シーズン最高成績”を比較することで、プロ野球史上No.1投手を探る旅。
この条件で絶対に外せない選手が、2013年の楽天・田中将大だろう。同シーズン、田中は24勝無敗という神がかり的な成績を残し、数々の大記録を打ち立てた。開幕から24連勝、前年から数えれば28連勝。さらにポストシーズンの2勝を加えた30連勝は、いずれもギネス認定の世界記録である。
加えて、5、6、7、8、9月と5カ月連続で月間MVPを受賞。5カ月連続、年間5度は、いずれも日本プロ野球新記録だ。それまでの記録は3カ月連続、年間3度だったことからも、もはや問答無用の大記録としか言いようがない。要は、MVP級の活躍を一年間途切れることなくやり通したということだ。
田中は、クライマックスシリーズのファイナルステージ(対ロッテ)でも1勝1セーブでMVP。巨人との日本シリーズも1勝1敗1セーブと活躍して、楽天を球団史上初の日本一に導いた。
この年の楽天のシーズン成績は82勝59敗の貯金23だから、田中一人で作った貯金24がどれほど球団の初優勝に貢献したか一目瞭然である。
この年の沢村賞の選考委員会は、わずか10分で田中を満場一致で選んで終了。MVPも、48年振りの満票受賞だった。
当時の田中=“世界最高の1人”と言える根拠
記録ずくめの投球を繰り広げた2013年。そして、ニューヨーク・ヤンキースに移籍して、メジャーの選手間投票の先発投手部門1位でオールスターに選出された2014年前半までの間、田中は世界最高の投手の一人だった。
それを証明するいくつかのデータを紹介しよう。
2013年のオフに、田中はポスティングシステムによってヤンキースと7年総額1億5500万ドルの契約を結んだ。2006年オフの松坂大輔(西武)の6年総額5200万ドル(ボストン・レッドソックス)、2011年オフのダルビッシュ有(日本ハム)の6年総額6000万ドル(テキサス・レンジャース)をはるかに上回る日本人プロ野球選手史上最高の金額である。