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「あかんわ…もう我慢できなかった」オリックス・森友哉が「涙のお立ち台」の後に語ったこと…希少がんと闘う大阪桐蔭の盟友へ届けた“覚悟”
posted2025/06/19 11:06

お立ち台で親友への思いが込み上げて言葉に詰まり、男泣きしたオリックス・森友哉
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
SANKEI SHIMBUN
心が身体を動かすのだと、何度も胸を打たれた1日だった。
6月15日の京セラドーム大阪。最初に驚いたのは、森友哉だったのではないだろうか。
この日のオリックス対巨人の試合前に行われた特別始球式で、森の大阪桐蔭高校時代のチームメイトだった福森大翔(ひろと)さんが登板した。福森さんは希少がんを患い、3度の手術を経て、現在は抗がん剤治療を行なっている。
ミットに届いた力強いボール
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その始球式では森が捕手を務めた。
約2カ月前に始球式を行うことが決まってから、シーズン中にも関わらず森は福森さんの練習にも付き合った。
届くかな……。
森のそんな心配をよそに、本番では、力強いボールが18.44mどころか、森の頭上を越える勢いで迫ってきたのだから驚いたに違いない。森は慌ててジャンプし、なんとかボールをミットに収めた。
「投げれたやん!」
森はそう言って駆け寄り、2人は固く抱き合った。
「正直、2週間前ぐらいに軽くキャッチボールをした時は、本当に3mか5mぐらいしか……。痛そうに投げてたんで、たぶん無理かなと思ってたんですけど、余裕で届いた。すごいな、と改めて思いました」
同級生への尊敬の念があふれた。
病室に駆けつけ「まだ泣くところでもないな」
始球式後、福森さんはマウンドから見た景色をこう振り返った。
「始めは友哉の顔しか見えなくて、高校時代を思い出したりとかしたんですけど、落ち着いてくるにつれて、球場全体を見渡せるようになった。友哉が和らげてくれたかなと思います。2カ月ぐらい前に体を動かすところからスタートしましたが、始めはまったく、抗がん剤の影響で腕が上がらなかったり、何回も休んでしまったりしたんですけど、いろいろな人にサポートをしていただいたおかげでこの日を迎えられて、本当によかったです」