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「野村克也がここまで言うとは…」菅野智之の“意外な評価”…入団拒否、巨人で無双、メジャーで活躍「じつは大学時代157キロ投げていた」菅野の半生
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太田俊明Toshiaki Ota
photograph byJIJI PRESS
posted2025/06/20 06:00
プロ1年目の菅野智之(2013年撮影)。35歳の現在は米・オリオールズでプレー
入団拒否→浪人を経て…
2011年のドラフト会議で巨人と日本ハムが菅野を1位指名。くじ引きの結果、日本ハムが交渉権を獲得したが、菅野はこれを拒否。結局、就職浪人という形で東海大に1年残る決断をした。
練習には参加できるが、公式戦には出場できない。翌年のドラフトで巨人に入団できる保証もない。そんな不安定な状況にも関わらず、「何がなんでも巨人!」と菅野は憧れのチームに入って伯父とともに戦うという初志を貫いた。こうした頑固さや忍耐強さが、その後の菅野の成長に大きな役割を果たしたのは間違いない。
2012年のドラフトで巨人の単独1位指名を受けた菅野は、順調に巨人の大エースへの階段を登っていく。
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新人年の開幕から先発ローテーションに定着して、オールスターにも出場。13勝6敗、防御率3.12という好成績でチームのリーグ制覇に貢献し、日本シリーズではシーズン24勝無敗の絶対エース田中のいる楽天に敗れたものの、シリーズ第6戦で、田中にこの年のシーズン、ポストシーズンを通じて唯一の黒星をつけたのが菅野だった。
敵なし状態…ベスト年はいつ?
菅野の巨人時代のベストシーズンに、2年連続して沢村賞を受賞した2017年(17勝5敗、防御率1.59)と2018年(15勝8敗、防御率2.14)が挙げられる。特に18年は、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の「投手3冠」を達成。登板数、完投数、投球回を含めた沢村賞の選考基準7項目をすべて満たしたのは、この年の菅野が最後。シーズン200回投球、シーズン8完封も、この年の菅野が最後になっている。投手の分業化が進んだいま、菅野はNPB最後の先発完投型投手と言えるかもしれない。
大学時代に157キロを記録した菅野は、160キロを夢見たこともあるというが、プロになって意識が変わった。「良いボールを投げる品評会ではないので。抑えたピッチャーが偉いと思うし、どんなに良いボールを投げても打たれたら元も子もない。野球ってそういう競技」(「中日スポーツ」2020年10月7日)。球速にこだわることなく、制球と配球で打者を抑える投球を目指したのだ。
そんな菅野を解説ブースから見ることが多かったという野村克也は、著書『巨人軍非常事態宣言』(宝島社新書)でこう評している。


