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「涙した高梨沙羅の失格とは別もの」スキージャンプ激震…極秘映像で暴かれた“スーツ不正事件”「最大のスキャンダル」はなぜ起きたのか
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byJIJI PRESS
posted2025/04/17 11:04

スーツ不正が発覚し、現地メディアに囲まれるノルウェー代表の首脳陣。スキージャンプ界に激震が走った
抗議は一度は却下され、競技は通常通り滞りなく行われた。ところが、表彰式まで済んだ後で事態は大きく動いた。用具検査官がノルウェー勢のスーツを分解して調べたところ、股下部分の不正改造が発覚。2位となった北京五輪金メダルのマリウス・リンビクと5位のヨハン・アンドレ・フォルファンの2選手が失格。4位にいた小林陵侑が繰り上がってメダル獲得となった。
試合直後はノルウェー首脳陣は事実を否定していたが、翌日には同国スキー連盟が不正を完全に認め、マグナス・ブレヴィグHCは「犬のように後悔している。W杯の世界にいるうちに完全に周りが見えなくなっていた」と平謝りした。
FISはすでに競技を終えていた女子や複合のノルウェー勢のスーツについてもあらためて検査を行うなど事態は拡大(女子と複合に関しては違反はなかったと判断)。選手たちは不正改造を知らなかったと釈明したものの、普段と違うスーツを身につけて気づかないはずはなく、合計5選手が暫定資格停止処分を受けた。
“高梨沙羅の涙”とはワケが違う
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「スーツの違反で失格」といえば、スキージャンプ競技では決して珍しい話ではないように思える。
それがここまでの騒ぎになったのは、今回の不正改造が野球のコルクバットや自転車レースの電動モーターのような、自覚的で悪質な行為であり、しかも動かぬ証拠が残っているという点にある。日ごとの体重、体形の変化によってずれが生じ、わずかに規定のサイズからはみ出してしまったというのではない。そこに検査員による計測方法の唐突な変更が重なった北京五輪の高梨沙羅のような事案とも決定的に異なる。
さらに、元選手らの告白も事態を悪化させた。
〈つづき→後編〉
