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りくりゅう「ペアは本当に難しい」世界選手権“涙の優勝”の後に明かした本音…“長い苦労の時間”を経て、三浦・木原が輝きを取り戻すまで
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2025/04/03 17:02

2年ぶりの世界選手権優勝を果たした三浦璃来と木原龍一
思い通りにはいかなかった2年間
2人にとって、世界選手権で初めて優勝したのは2023年、さいたまで開催されたとき。2年ぶり2度目の優勝に、三浦は言う。
「小さなミスがたくさんあったんですが、優勝することができて、ほんとうによかったと思います。一度目(の優勝)は素直にただうれしかったですが、この2年間、怪我だったり、たくさんの苦労だったり、うまくいかないことがほんとうにあった中で優勝できたので、いろいろな感情が混ざり合っていて……。でも、すごくうれしいです」
三浦の言葉の通り、最初の優勝のあとは苦しい時間を過ごした。2023-2024シーズンは木原が腰椎分離症に苦しみ、今シーズンも三浦、木原それぞれにコンディションが整わないときがあった。
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1試合1試合、階段を上がるように成長していきたい、上回っていきたいと考えていたが、思い描いたようにはいかなかった。
昨年12月のグランプリファイナルでは2位と表彰台に上がったが、ミスの相次いだフリーに「内容ははっきり言って話にならないレベル」(木原)と悔しさを見せた。同月末の全日本選手権で優勝したあとは、ミスがありつつも得点を伸ばせたことを成果としつつ、例えばショートについて「練習でできているのにできていない」(木原)と、反省の色も滲ませた。
今大会はこれまでと何が違ったか?
四大陸選手権を経て迎えた世界選手権は、これまでと心持ちが違った。ショートの演技後、木原はこう語っている。
「自分を追いつめることなく、ウォームアップであったり、バスの移動であったり、すべて楽しんで試合に臨むことができました」
「今シーズンは楽しむということをあまりできていなかったので、楽しみつつ、しっかりとパフォーマンスできたのはすごくよかったです」
「楽しむ」という言葉が相次いだ。
「4年前の世界選手権で初めてフリーを滑った時の気持ちはどんなだったかを思い出して」とも木原は言う。4年前とは、2人が組んでから初めて出場した世界選手権のこと。あのとき、世界屈指のペアたちと一緒に滑ることができるのが、ただただ楽しかった。
今シーズンは、より高いレベルを追い求めるがあまり、いわば「原点」を忘れていた。木原が自分を追い込めば、三浦もそれに影響される。だから世界選手権へ向けて、「楽しむ」ことを心がけた。それがよい循環を生み出し、世界選手権2度目の優勝をもたらした。練習で、トレーニングで、日々やることをやったうえでの「楽しむ」ことの大切さがそこにある。