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「宇野ちゃんの瞳孔が開いてる…」対戦相手だった小倉由美が打ち明ける、“北斗晶の頸椎骨折”の真実「ボルトでつながれた姿を見た私は…」 

text by

伊藤雅奈子

伊藤雅奈子Kanako Ito

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photograph byShiro Miyake

posted2025/02/21 11:16

「宇野ちゃんの瞳孔が開いてる…」対戦相手だった小倉由美が打ち明ける、“北斗晶の頸椎骨折”の真実「ボルトでつながれた姿を見た私は…」<Number Web> photograph by Shiro Miyake

全日本女子プロレスでデビューし、ドラマ「輝きたいの」にも出演した元女子プロレスラー・小倉由美さんのインタビュー(第2回)

「宇野ちゃんの瞳孔が開いてる。救急車を呼ぼうと…」

――小倉さんと永堀一恵さんのレッド・タイフーンズが、後輩の堀田祐美子選手と宇野さんと対戦。宇野さんが頸椎を骨折して、生死をさまよいました。後輩で運動神経が抜群だった宇野さんに対して、自分のポジションが奪われてしまうかもしれないという危機感を抱いていましたか。

小倉 全女でよくある、試合順が後半から前半に落ちていくみたいな、その危機感はあったかもしれないです。若い芽を摘みたいということはなかったけど、あの子たちより自分たちの世代が上にいなければいけない、もっと上に行かなきゃいけないっていう思いはありましたよね。2年ぐらい先輩だったし。でも、いま思えばですけど、目につく人、目で追ってしまう人って、10人いたら1人はいるんですよ。

――その1人が、宇野さんだったと。

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小倉 だったと思います。そういう子がトップに上がっていくけど、それは自分じゃないんだなっていうのは、薄々気づいてましたね。自分がWWWA(世界)シングルを獲るとか、そういうことは思ってなかったです。

――自分はタッグ王者どまりだろうと?

小倉 そうです。それは思ってました。

――事故から40年近くたちますが、いまでも覚えていますか。

小倉 覚えてます。試合後はとにかくバタバタしていて、宇野ちゃんの瞳孔が開いてるから危ないってことで、太(ボブ矢沢レフェリー)が「救急車を呼ぼう」と言って、救急車が来て、先輩たちがすごいざわついてたんですね。そこから、みんなの私を見る目が冷たくなっていった。腫れ物にさわるというか、しばらくそういう状態が続きました。

ボルトでつながれた宇野と病室で対面した日

――選手仲間の目が、ですか。

小倉 そうです。宇野ちゃんはそのまま病院に運ばれて、その日は旅の最終日だったので、私はバスで東京に戻ってきたんだと思います。自分もそこからちょっとメンタルがおかしかったので、落ち着いてから(宇野の入院先の病院に)行かせてもらって。その間はブル(中野)ちゃんが付き添ってたので、電話で「この日に行くからね」って話をしてました。

――「メンタルがおかしかった」というのは、どういうことですか。

小倉 祐美ちゃんに顔を蹴られて、歯が抜けて飛んでしまって、1週間以上かな、顔が痛くて……。外に1歩も出れないぐらい、すごく腫れてしまったんです。病院で診てもらうと、頬の骨が欠けていたことがわかり、薬を処方してもらって。

――それは初の情報ですね。

小倉 先生に、「ここの骨はくっつくんですか?」って聞いたら、「いや、もうくっつかないよ」ってあっさり言われて。だから、いまもそのままです。

――えーっ!!

小倉 あははは(笑)。平気なんで。

――恐ろしいことをサラッと言いますね。で、宇野さんの見舞いに行けたときは、どんな会話を交わしましたか。

小倉 向こうが「ごめんなさい」って、こっちも「ごめんね」の繰り返し。そのときはボルトでつながれてて、ベッドにくくりつけられてたんで、それを見た私はワンワン泣いて。向こうも、「ごめんなさい」って泣いて。

【次ページ】 「また対戦するのが怖い」という不安があった

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