箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「こいつら強かったな」なぜ中大は箱根駅伝で“想定の上限より上”の2位に? “ピクニックラン”狙う青学大・原監督に藤原監督の不敵「1年生、強いですよ」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byNanae Suzuki
posted2025/01/03 06:04
藤原正和監督が「想定の上限より上」という2位に入った中大。5区の4年生・園木大斗を迎えるメンバーの表情は一様に明るかった
1年前。屈辱を晴らすための挑戦は箱根駅伝翌日の1月4日から始まった。手書きで紙に書く健康チェックシートの提出を義務づけた。これまではデジタルで体重や心拍数などのデータを管理していたが、記入漏れがでるなど、おざなりになっていた。
毎朝、測定する血圧は体調を把握するための目安とした。通常の数値と大きくズレが出始めたら、体調の異変を示すシグナルとしてサプリメントを摂った。前回大会で体調不良者が続出するきっかけとなった大会直前の合宿は中止された。恒例であっても慣例にとらわれず、スキを見せなかった。
規律の緩みも注意「24時間を陸上中心に」
体だけでなく、心も整える。
ADVERTISEMENT
藤原はある時、食事中にスマートフォンを触っている選手を見つけた。4年生を呼んで、こう諭したのだという。
「緩んだ空気になっている。だから駅伝で最後、大事なところの詰めが甘く、どんどん遅れていってしまうんだよ。同じ人間がやることなんだから、24時間を陸上中心にやっていかないといけない」
食事中のスマホ禁止は本来、選手たちが決めたルールだった。走ることとは関係ない。だが、日常生活から背筋を正す大切さを指摘したのだ。
常勝チームの監督は二兎を追って、組織を強くする。目先の勝利を求めながら、選手を育てるのはチームスポーツにとって永遠の課題である。
4月。藤原は入学したばかりの1年生に伝えた。
「申し訳ないけど、今年は予選会からスタートになるから、まずは10月に向けて距離を踏むよ」
箱根駅伝に出場するためには、10月の予選会を突破しなければならない。藤原が描いた再建の方針は総合力の底上げだった。新1年生も例外ではなく、5月に合宿を組むのは珍しいことだった。