箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「こいつら強かったな」なぜ中大は箱根駅伝で“想定の上限より上”の2位に? “ピクニックラン”狙う青学大・原監督に藤原監督の不敵「1年生、強いですよ」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byNanae Suzuki
posted2025/01/03 06:04
藤原正和監督が「想定の上限より上」という2位に入った中大。5区の4年生・園木大斗を迎えるメンバーの表情は一様に明るかった
当初のレースプランとは違う展開だったという。だが、吉居には背中を押された過去のレースがあった。
「兄の動画を結構、見ていたのでイメージはできていました」
昨年までの同僚で兄の吉居大和(現トヨタ自動車)は22年に区間記録の1時間00分40秒をマークしていた。3年前の兄は5km過ぎから独走。弟もまた兄の“背中”を追った。無駄のない美しいフォームでビルの合間を駆けてゆく。5km通過は兄よりも速かった。
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一人旅の1時間1分7秒は兄に及ばなかったが、仲間を鼓舞する力走になった。走り終えるとテレビインタビューで、こう伝えたのだ。
「ここのところ、チームとして1区から流れないことがあって、楽しい駅伝をできていなかった。先頭を走って、先頭で渡して楽しい駅伝にしてほしい」
予選会、全日本と不調続き…低かった前評判
チームは前回大会の後、昨年10月19日の箱根駅伝予選会を6位通過。11月の全日本大学駅伝は12位に終わり、夏以降、不調が続いた吉居も7区14位に沈んだ。
「全日本での失敗で自分の気持ちの弱さ、考えの甘さに気づけました」
この日、後に続く選手もエースの復調に触発された。2区の溜池一太(3年)が手堅く走ると、3区の本間颯(2年)は区間賞でリードを拡大。「1、2区の先輩がいい流れを作ってくれたので、初めての箱根駅伝でしたが楽しく走れました」と感謝した。4区の白川陽大(3年)も続き、出場校のなかで上位10人の1万m平均タイムが最速を誇る選手たちは勢いに乗った。
藤原は選手たちの躍動に目を細める。
「前回は絶対に優勝しようとやってきましたが1回崩れると、立て直すのに時間がかかると思っていました。1年後、前のチームの分まで強かったことを、まずは片道ですが証明できたことは非常によかったです」