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ブンデス降格危機→5位! 「自分たちも驚き」の躍進を引っ張る佐野海舟…逮捕報道に加え「レベルが違った」苦境から主力に急成長できた理由
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2024/12/30 17:02
ブンデスリーガ第15節、フランクフルト戦に先発した佐野はフル出場して3-1勝利に貢献。7勝4敗4分としたマインツは5位に浮上して2024年を終えた
コミュニケーションというところで、実は少しばかりの行き違いもあった。佐野にはドイツ語通訳として、ドイツ在住歴が長い日本人がサポートに入っている。ただ監督のボー・ヘンリクセンはドイツ語も解するが、基本的に英語の方が得意。ミーティングやピッチ上の指示は英語が用いられる。
日常のことやクラブスタッフ、チームメイトとのやり取りにドイツ語通訳のサポートは重要だが、通訳にもプレー面についての監督との英語のやり取り全てを的確に訳せるほどの英語力があるわけではない。だからと言って、別の英語通訳をつけるというのもやりすぎだろう。
通訳に頼れないことが逆によかった
結果として、この状況が佐野にとっては逆によかったのではないだろうか。通訳一人に任せることができない状況なので、佐野は最初から監督の意図を理解しようと必死で耳を傾け続けていた。監督も戦術ボードを用いたり、ビデオ分析を見せるなど視覚的に理解しやすくしようとしながら、情熱的に丁寧に説明していく。佐野もわからないことがあれば自分から聞く。
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「ミーティングの時とか、監督から言われていることは大体わかるようになってきましたし、コミュニケーションをとる回数というのも多くなってきているので、そこは徐々に改善してきているのかなと思います」
監督からの高い要求
ヘンリクセン監督は中盤センターでコンビを組む元ドイツ代表MFナディム・アミリと佐野の共同作業こそが「チームで最も重要な部分」と強調している。だからこそ、ある日の記者会見で、佐野とアミリの間によりスムーズで明確なコミュニケーションが生まれることを要求したこともあった。要求値の高さは期待の表れ。それは佐野も感じている。
「要求されていることは高いと思います。でも監督が『できない』と思ってたら言わないと思うんです。だからそれに応えないといけない。今はチームともいい関係でやり合えているのかなと思います」
そんなピッチ内の充実は、ピッチ外に落ち着いた環境があったことも大きい。リラックスして過ごせる環境がマインツという街にあった。ローマ時代からの遺跡を残し、市内には荘厳な大聖堂がそびえる歴史的な街。人口20万人ほどで、大学生も多い。周囲には自然が多く、市民にはほどよいのんびりさがある。