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ブンデス降格危機→5位! 「自分たちも驚き」の躍進を引っ張る佐野海舟…逮捕報道に加え「レベルが違った」苦境から主力に急成長できた理由
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2024/12/30 17:02
ブンデスリーガ第15節、フランクフルト戦に先発した佐野はフル出場して3-1勝利に貢献。7勝4敗4分としたマインツは5位に浮上して2024年を終えた
「めちゃくちゃ充実してます」
「ご飯もおいしいし、人も温かい。めちゃくちゃいい街ですね。めちゃくちゃ充実してます。好きです」
そう答える佐野の表情にはとても優しいものがあった。せっかくチームも自分も好調なだけに、ウィンターブレイクに入ることにやきもきしているのではないかと思い、「正直いま休みたい? それともすぐ次の試合をやりたい?」と尋ねてみたら、即答してきた。
「正直すぐやりたい。けど仕方ないんで。しっかりと休みます。でもこの中断期でやっぱり差が出ると思う。しっかり休みながら、どうしたらもっと成長できるかを考えていきたいです」
ネガティブしかなかった開幕当初
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いろんなことがあった1年だった。リーグ開幕戦のウニオン戦後には、佐野は「ポジティブなことは……全然ないですね」と悲観的に振り返っていたものだ。
それが、11月のフライブルク戦後に「ドイツに来た頃に比べて、試合後ポジティブな気持ちになることは増えました?」と尋ねてみたところ、「増えましたし、それをどうつなげていこうかなというポジティブな気持ちになれています」と話すようになっていた。
時間と環境が少しずつ何かを解かしていったのだろう。フランクフルト戦後には、真剣な表情でこう話していた場面があった。
「僕をサポートしてくれた人たちのために、自分が何ができるかっていうのを、これからもずっと考え続けて。自分のよさを出すことと、チームの勝利に結びつけることというのを考えながらやっていきたいと思います」
サッカーと真摯に向き合うことで
物議をかもした事件があった。不起訴処分になったからといって、全てを終わったこととして、すぐにサッカーのことだけに気持ちを切り替えられるほどシンプルなものではない。むしろ自分が犯した過ちへの呵責はどうしたって残っているだろう。風化させていい話でもない。
それでも、自分を前に進ませてくれた人への感謝の思い、そして自分を表現できる最大の手段として、サッカーと真摯に向き合うことが自分にできる最大の返事になると信じて、毎日全力で取り組み続けている。