第101回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
〈法政大学〉「まだ限界は感じていない」遂に覚醒した大島史也(3年)が初の箱根駅伝で発揮する逸材の本領
posted2024/12/24 10:00
text by
加藤康博Yasuhiro Kato
photograph by
Nanae Suzuki
今季、法政大学の歴史がふたつ塗り替えられた。
大島史也(3年)が9月に5000mで13分35秒33、10000mでも11月に28分10秒01と大幅に自己ベストを更新。これは西池和人(コニカミノルタ所属後引退)、徳本一善(現・駿河台大学監督)という、かつて箱根駅伝を沸かせた大学のレジェンドふたりがそれぞれ持っていた法大記録の更新でもあった。
「以前はスピードがあれば5000mも10000mも走れると思っていたのですが、その考えだけで取り組んでいた2年目までは思うような結果を残せず苦しみました。でも今年はスタミナ強化のためにこれまで以上にジョグで距離を踏んでいて、それが結果につながっています。今はまだ自分の限界は感じていなくて、これからどこまで行けるんだろうという感覚です」
そう語る表情には自信と今後の自分自身の成長への期待がにじむ。入学時からそのスピードを評価されてきた逸材が、いよいよ本領発揮の時を迎えようとしている。
監督が不安になるほどの練習量
今年の変化の要因として挙げられるのは意識の変化だ。3年生となり、チームの中における自分の立ち位置と責任を強く感じるようになったという。だが今季前半は決して順調ではなく、5月の関東学生陸上競技対校選手権(関東インカレ)1部5000mは34位。また6月の全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会では、途中棄権者が出たためではあるが、出場権をつかめなかった。ここで大島はひとつの覚悟を決める。
「自分がしっかりしないと箱根駅伝では戦えない。これまでは先輩たちが走る区間以外を狙いたいと考えていましたが、実績を積んで、自分も主力としてメンバー入りしたいと考えるようになりました。そのために夏に変わろうと思ったんです」
そして「夏合宿ではチームで一番走り込もう」と決めた。だが練習時間内だけでは差は生まれないため、それ以外の時間もひたすら走り込んだ。その練習量は坪田智夫監督も舌を巻くほどだった。
「こちらが不安になるくらい自分で練習をしていました。もともとスピードを備えた選手で高い出力が出せるため1、2年生の間は故障しがちで、いい練習をしてもそれが単発で終わることが多かった。ですが今季は身体もできてきて、練習が継続できています。夏合宿で段階的に距離を伸ばし、培ったベースにスピード強化の練習が乗ったことで一気に力が伸びました」
夏合宿が終わった段階で、坪田監督は「今年は大島がいいです。箱根駅伝の2区を走れるだけの練習ができています」と何度も口にしていた。トラック2種目での好結果は、ある意味必然だったといえる。