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「ゴキッって音が」脱臼で“鋼の肉体”を…千代の富士が力士人生の危機から“伝説の横綱”になるまで「肩に負担のかからない相撲を目指さなきゃ」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byDavid Madison/Getty Images
posted2024/10/30 17:45
昭和の大横綱・千代の富士。両肩の脱臼という致命的なケガを、鍛え上げた肉体でカバーした
1979年の春場所。千代の富士は取組中に今度は右肩を脱臼してしまったのだ。
この前年、千代の富士は再入幕を果たすと夏場所には大関・貴乃花(初代)から初勝利を奪い、初の敢闘賞を手にするなど勢いに乗りつつあった。右肩脱臼時の番付は西前頭8枚目と、さらなる上の地位が見えてきた状況で、人生最大のピンチを迎えたのだ。
肩に負担のかからない相撲を
両肩を痛めた時点で、力士人生をあきらめたとしてもおかしくない。手術を選択したとしても腕の動きに制限がかかると医師から告げられた中で、千代の富士は「体で負けているんだから、気力では負けるな」とゲキを飛ばした師匠・九重親方とともに別の選択肢を探った。
「体に負担のかかる荒い相撲というのかな。大技を使いながら取ったもんだから、怪我にもつながっていったと思うんです。だから、これからはこういうことじゃダメだ。正攻法で肩の怪我を直しながら、肩に負担のかからない相撲を目指していかなきゃいけないと、師匠と話し合った」
それは――後に千代の富士を語る代名詞となる肉体美を作り上げる――筋力トレーニングだった。
〈つづく〉