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「SMBC つなげるラグビープロジェクト」。ラグビー元男子日本代表主将の菊谷崇の工夫から拡がる笑顔溢れるラグビーの輪
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byYuki Suenaga
posted2024/11/06 15:00
ラグビー元男子日本代表主将 菊谷崇氏が考案したラグビーを楽しむメニューも体験できる「SMBC つなげるラグビープロジェクト」
初めてボールを触る子も楽しめる工夫のポイントは、『失敗』をなるべく消す
「きょうは初めてラグビーボールに触る子ばかりだし、ボールを追いかける楽しさを味わってほしい。そのために、ゲームの中から『失敗』をなるべく消したいと思ったんです。落としても拾えばゲームは続くルールにすればずっと楽しめる。でも、楕円球は弾むとどっちへ行くか分からないですよね……」
そこから作戦会議の中身は膨らむ。
「パスはノーバウンドで捕った方がいいよね。どうしたら落とさないかな?」
「強い、速いパスはカッコいいけど、捕るのは大変だよね」
「なるべく捕りやすい、優しいパスを投げたらいいんじゃない?」
「相手の目を見て投げたらいいんじゃないかな?」
「そうだね、捕る人の気持ちになるといいね」
「一人で考えるよりもみんなで考えた方がいろんなアイデアが出るね」
コーチはヒントを出すだけ。自分たちで答えを見つければ身につくし、すぐ試せる。うまくいかなくても「じゃあどうしようか?」と考えられる。それも楽しい。
「子どもたちに面白がってもらうのって簡単じゃない。カオス(混沌)になりすぎてもいけないけど、単純すぎても飽きてしまう。作戦を立てて実行して、うまくいったところとうまくいかなかったところをチェックしてまた実行すれば、PDCAサイクルじゃないけど、実感したことを次に繋げられる」
ボールを前に投げて良くても、身体をぶつけるタックルがなくても、やっぱりこれはラグビーだと感じた。
「SMBC つなげるラグビープロジェクト」を通じて広がるラグビーの輪
「SMBC つなげるラグビープロジェクト」はこのあと、全国で体験会を実施する。10月26日に実施した仙台でのイベントも経て、大阪、熊谷。まだ詳細は確定していないが、各地のラグビー仲間とも連携しつつ、開催地も全国に増やしていく予定だという。
イベントでは参加者全員が手にインクをつけて手形を押した。ゲスト講師やアンバサダー、そしてこれから参加する親子たち、今まで知らなかった、たくさんの人たちがラグビーで繋がったシンボルとして、たくさんの手がひしめく巨大アートを作るのだ。
これまでラグビーは、ちょっと敷居の高いスポーツと見られていたと思う。鍛え上げた選手が身体をぶつけ合いながらゴールラインを目指す激しい戦いは、誰にでもできることではない。だけど、ファンもボールに触れあい、ラグビーマインドを味わえば、トップ選手のプレーも今までより身近に感じられるだろう。
「私たちは、日本をラグビーが世界一身近な国にしたいと思っているんです」と山神氏は言った。それはきっと、日本代表が世界で勝つこと、ラグビーに携わった人たちがスポーツ以外のフィールドでも活躍することに繋がっていくだろう。
「SMBC つなげるラグビープロジェクト」でラグビーの魅力を堪能した約70人の親子はその1期生。仲間はこれから、もっともっと増えていく。