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「SMBC つなげるラグビープロジェクト」。ラグビー元男子日本代表主将の菊谷崇の工夫から拡がる笑顔溢れるラグビーの輪
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byYuki Suenaga
posted2024/11/06 15:00
ラグビー元男子日本代表主将 菊谷崇氏が考案したラグビーを楽しむメニューも体験できる「SMBC つなげるラグビープロジェクト」
大人と子どもが混成となったユニークなミニゲーム
開会式が終わると、子どもたちは勢いよくピッチへ飛び出した。柔らかい緑の絨毯の上で思い切り遊べるのはそれだけで最高な体験に違いない。まして秋晴れの日差しのもとだ。その気持ち良さといったらないだろう。
ラグビー体験会が始まる。まずはクマさんポーズ、ゾウさんポーズ、じゃんけん体操……でウォームアップ。ボールを手渡しで繋いでいくパスリレーは手渡しの距離から始まり、距離がだんだん遠くなっていく……菊谷氏が考案したメニューは、子どもたちを飽きさせない工夫がふんだんに施されている。
そして始まったのは、4チームに分かれてのミニゲーム。タックルなしのタッチラグビーは体験会ではよく見る光景だが、この日のミニゲームはユニークだった。チームは大人と子どもの混成。ボールを持ったら3秒以内にパスをして、グラウンドを区切った中にバラバラに置かれたゴールのサークルにボールを持って入ればトライ。誰かひとりふたりが上手くて強くても点は取れない。しかも得点は子どものトライのほうが高いのだ。これがけっこう難しい。
「じゃあここから作戦会議の時間ね! みんな水分を取りながら話し合って!」
菊谷氏の声が響いた。4チームにはそれぞれコーチがついて、一緒に作戦を考える。とはいえ、応募で集まった参加者たちはみな、今日初めて会ったばかり。作戦なんて話し合えるのだろうか、と思ったら心配なかった。子どもたちも大人たちも予想以上に「こうしたらいいんじゃない?」とアイデアを出し合っている。
「作戦会議と言っても、みんな最初は遠慮して、意見を言うのは難しい。でも一度ゲームをやって、勝ちたい、じゃあどうしたらいい? と問いかけるといろんなアイデアが出てくるんです」と菊谷氏は語る。プログラムは、実際に身体を動かしている時間は3分の1、残りの3分の2は作戦を考えたり話し合う時間になるように組んだという。
作戦会議を経てゲームが再開。明らかにゲーム中の声が増えている。どのサークルでトライを狙うか、どの大人がボールを持ったときに誰と誰がどっちへ走るか……とはいえ作戦だけで点は入らない。
「頑張って走ろうね!」
みんなの顔がさっきよりもイキイキしている。アンバサダーの東原亜希氏、MCの浅野杏奈氏も意見を出して作戦を考え、ゲームでは一緒に走り、パスをして楽しんでいる。
ゲームを見ていて、参加者が楽しそうにしている理由をもうひとつ発見した。このゲームにはノックオンやスローフォワードがないのだ。ボールが地面に落ちてもノープロブレムでゲームは続く。ゲームが途切れない。
「そこは工夫したところです」
菊谷氏に尋ねると、ラグビー元男子日本代表主将の顔がほころんだ。