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プロ野球PRESSBACK NUMBER
史上初? 「トミー・ジョンを受けた高校生がドラフト指名」ソフトバンク育成7位・津嘉山憲志郎が手術に踏み切った理由…高まる“リスク”と“責任”
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph bySankei Shimbun
posted2024/10/26 17:01
最速148キロの剛腕として注目を集めた津嘉山憲志郎投手。高校2年でトミー・ジョン手術を受けることを決断した
「甲子園という大きな目標がある以上、投手は誰しも自らマウンドに上がり続けたいという気持ちが強いと思うんです。常日頃から、自分のヒジ・肩と相談しながら、柔軟体操やトレーニングをちゃんとして、ケアも怠らないことが大事だと思います」
指導者の責任は大きい
ドラフト1位指名されて夢のプロ野球の世界に飛び込んだ大卒1年目の投手3人がトミー・ジョン手術を受け、高校生の津嘉山も高校2年生で手術に踏み切った。プロ野球選手やアマチュアのトップ選手を幾人も担当してきた慶友整形外科病院(群馬県館林市)の古島弘三医師は、投手のトレーニング法が確立され、投球の出力が上がったことを、ここまでトミー・ジョン手術が増えた要因として挙げ、ヒジに負担の大きい変化球についても言及した。
「投手にとって一番負荷がかかる変化球はスライダーです。前腕を回外(手首を回して手のひらを上に向ける動き)させるような腕の使い方をしますので、1試合でスライダーを投げすぎることは若い世代では避けた方がいい。たとえば、カウントを整えるボールには使わず、ウイニングショットに限定するとかですね。反対に負荷が少ないのはチェンジアップ、フォークボールです。一時期、フォークボールはヒジの負担が大きいと言われていましたが、抜くようなボールというのは意外と少ないのです」
今春のセンバツを制した健大高崎の2年生エース・佐藤龍月は、大きく横滑りするスライダーが武器の左腕だった。しかし、今夏を前に左ヒジの内側側副靱帯の損傷と疲労骨折が発覚し、彼もまたトミー・ジョン手術に踏み切った。
現代においてヒジにメスを入れることは投手の未来を奪うことではない。だが、避けられなかったのか。アマチュアの若い年代であればあるほど、日頃の練習を観察し、試合で起用する野球指導者の責任も大きいのだ。