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プロ野球PRESSBACK NUMBER
史上初? 「トミー・ジョンを受けた高校生がドラフト指名」ソフトバンク育成7位・津嘉山憲志郎が手術に踏み切った理由…高まる“リスク”と“責任”
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph bySankei Shimbun
posted2024/10/26 17:01
最速148キロの剛腕として注目を集めた津嘉山憲志郎投手。高校2年でトミー・ジョン手術を受けることを決断した
昨年11月、津嘉山はトミー・ジョン手術を受けた。当然ながら17歳の心中に、術前のスピードを取り戻せるのかという不安が襲った。
「ただ、そんなことばかり考えていても良いことはない。プラス思考でいるようにしました」
靱帯断裂という大ケガを負った要因について、津嘉山はこう話す。
「スピードが出るということは、それだけ負担がある、ということは言われました。僕の投げ方とか、疲労(の積み重ね)だとか、いろいろなことが重なって、靱帯が断裂したのかなとは思いますが、『あれが悪かった』というような答えは僕の中ではありません。今後はいかに右ヒジに負担をかけない投げ方をするかというのが大きな課題になっていく。あまり腕を使わず、下(下半身)だけで投げるスタイルになっていきたいなと思っています。まずは下半身を鍛えて、土台をしっかり作っていきたい」
手術を受けて志望届を提出した高校生は初めて?
10月24日のドラフト会議を前に、津嘉山はプロ志望届を提出した。プロ野球のスカウトによると、「トミー・ジョン手術を経験した高校生が、志望届を提出したケースは初めてではないか」という。少なくとも現時点で、右ヒジにメスを入れた経験が、プラスの評価になるとは考えにくい。まして、津嘉山はいまだブルペンに入るどころか、キャッチボールも再開していないのだ。それでもプロ野球選手になるという夢を叶えるために、決断した。津嘉山は言う。
「担当の先生からは『キャッチボールは始めて良い』という許可が出ているんですけど、自分としては慌てる必要はないのかなと。(ドラフトを前にした)特別な緊張感はありません。仮に指名されなかったとしても、(NPB以外の)上で野球を続けることには変わりない」
ドラフト会議当日——スタートから3時間近い時間が経過した時、津嘉山の名前は呼ばれた。福岡ソフトバンクが育成7位で指名したのだ。
資金力が豊富で、支配下・育成で大量に選手を獲得する一方、福岡ソフトバンクは選手を見切るのも早い。育成契約ならばなおさらだ。それでも12球団一を誇るファームの練習環境は、リハビリ中の津嘉山の助けとなるだろう。
自分と同じ高校生をはじめ、野球に励む小中学生のなかにもいる、ヒジの痛みと闘う投手に対し、津嘉山はこんなメッセージを送った。