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「50-50」へカウントダウン…大谷翔平はなぜ盗塁を量産できる?「ルール変更だけじゃない」MLB通算98盗塁の青木宣親が語る「メジャー盗塁術」
posted2024/09/12 17:00
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Getty Images
ドジャース・大谷翔平選手の「50-50」達成がカウントダウンに入った。50本塁打と50盗塁の同時到達は史上初。ファンをも驚かせているのが激増した盗塁数だろう。右肘手術の影響から今シーズンは打者に専念しているとはいえ、体重95kgと大柄で、元来「スピードスター」というタイプでもないだけに、その数字は意外にも映る。メジャーリーグで盗塁を増やすことの難しさは何か−−。メジャー7球団で通算98盗塁を記録しているヤクルトの青木宣親外野手に聞いた。
メジャー特有の難しさ
「厳密に言えば、メジャーにはモーションが大きい投手がいて、そういう相手に対しては盗塁は決めやすいと思います。でも、だからと言って日本のプロ野球より盗塁が簡単に成功するわけではないです。近年はクイックも多いし、そもそも外国人のピッチャーは予備動作が少ない。日本人投手は動作の中に“間”を作ることが多いけれど、外国人投手は始動してすぐにボールをリリースするから、後ろから見ているとスタートが切りづらいんです。もちろん、キャッチャーの肩も強いですから簡単にはセーフになりません」
さらに30球団あるメジャー特有の難しさとして、シーズン中に同じ投手と対戦する機会が少ないことも挙げられる。
「僕がアメリカにいた頃は、1シーズンに全ての球団と対戦するわけではありませんでした。昨年からインターリーグが増えて対戦するようにはなりましたが、それでも別のリーグのチームであれば年に1回対戦するかどうか、という投手が沢山いる。そんな中で出塁してモーションを盗み、一発で成功させなきゃいけない、というのは大変だと思います」
「死に物狂いで30盗塁」秘話
青木は2012年からメジャーリーグに挑んだ。前年までヤクルトでの8年間では、シーズン200安打以上を2度記録し、首位打者のタイトルを3度獲得。プロ3年目の06年には41盗塁で赤星憲広(阪神)を抑えてセ・リーグ盗塁王に輝いている。渡米前年の11年シーズンは年間8盗塁だったが、ミルウォーキー・ブルワーズでのメジャー1年目はいきなり30盗塁をマーク。この時のことを、9月10日発売の「青木世界観」(尾崎世界観との共著、文藝春秋刊)の中で、こう語っている。
初めは代打、代走、守備固めというようなところからの起用でした。それでもレギュラーの選手が休みの時にスタメンで出て結果を出していくうちに、出場機会が少しずつ増えていった。
ギアを上げる時が来たと思いましたね。ここだ、ここだ、ここでやりきらなきゃダメだって。5月くらいからスタメンで出場するようになってきたんですけど、実は6月に肉離れしたんです。左の大腿四頭筋。これは酷い状態でした。