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「50-50」へカウントダウン…大谷翔平はなぜ盗塁を量産できる?「ルール変更だけじゃない」MLB通算98盗塁の青木宣親が語る「メジャー盗塁術」
 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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posted2024/09/12 17:00

「50-50」へカウントダウン…大谷翔平はなぜ盗塁を量産できる?「ルール変更だけじゃない」MLB通算98盗塁の青木宣親が語る「メジャー盗塁術」<Number Web> photograph by Getty Images

「50-50」に向け盗塁も量産中の大谷翔平

 トレーナーさんに治療してもらって誤魔化して試合に出て、また散らして周りをほぐして試合に出て……その繰り返し。それで6月から4カ月やりきったんですよ。本当に毎日が地獄のような日々でした。

今も残る左足の“勲章”

 もし周囲に肉離れしていることがバレてしまえばもう終わりです。僕みたいに安い金額で契約した選手なんて、簡単に見切られてしまう。マイナーにも実力がある選手はたくさんいますからね。代わりはいくらでもいる、という世界です。

 そもそも、メジャー1年目にある程度できるところを見せないと、2年目以降なんてない。そういう状況は理解していたので死に物狂いでした。その年は(筋肉が)切れたままの足でシーズン30盗塁。最後の方なんて、アウトになってもいいからとにかくスタートを切っていた。どんなことをしても30までいこうと思っていました。29と30とでは全然違いますから。

 シーズンが終わってから、トレーナーが「多分、ちょっと(筋肉が)切れてたね」って言っていました。「言ったら心折れるから言わなかったけど」って(笑)。実は今でも左足はその部分だけ凹んでいるんです。勲章、ですかね。

独自に研究した投手の“あるポイント”

 青木のメジャー挑戦は荒波の中での船出だった。ポスティングシステムでブルワーズが交渉権を獲得したがすぐに入団は決まらず、トライアウトからのスタートだったのだ。“与えられた席”はない。激しい競争の中で青木は、バッティングのみならず走力も武器にそのポジションを勝ち取っていった。

 当時、青木は自身の足を生かすため、独自に対戦相手を研究していた。データ解析全盛である現在に比べれば資料は少なかったが、そんな中でも対戦する可能性がある投手の映像を徹底的に見返していたのだという。

「特にチェックしていたのは、投球のモーションに入った時に一番初めに動くのはどこなのか、というところでした。例えば右投手の場合、動作としては踏み出す左足が一番最初に動き出すように見えますが、実はその前に右足がほんの少しだけ内側に折れている、とか、腕がピクッと動いているとか……。本当に細かい部分ですが、そういったことをまず探して頭に入れておく。その上でいざ出塁したら、その一部分に集中するのではなく、投手の動きを漠然と見るような感じで五感を研ぎ澄ませてスタートを切る、という感じでした」

戦術家の指揮官との出会い

 当時ブルワーズの指揮を執っていたのがロン・レニキー監督。現在は大谷のいるドジャースのGM特別補佐を務めている指揮官は、戦術面でも非常に緻密で隙の無いプレーを好んだ。青木はそのプレースタイルを体現することでチャンスを掴み、メジャーの険しい道を切り拓いていったのだ。

【次ページ】 成功確率を上げるスピード以外の要素

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