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「50-50」へカウントダウン…大谷翔平はなぜ盗塁を量産できる?「ルール変更だけじゃない」MLB通算98盗塁の青木宣親が語る「メジャー盗塁術」
 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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posted2024/09/12 17:00

「50-50」へカウントダウン…大谷翔平はなぜ盗塁を量産できる?「ルール変更だけじゃない」MLB通算98盗塁の青木宣親が語る「メジャー盗塁術」<Number Web> photograph by Getty Images

「50-50」に向け盗塁も量産中の大谷翔平

 投手と走者の関係という点では、青木が在籍していた当時と現在では大きく状況が変わっている。例えば23年シーズンから導入されたピッチクロックや、投手の牽制回数の制限だ。1打席の間に2回まで牽制することができ、3回目までにアウトにできなかった場合はボークが宣告されて走者が進塁することができる。実際に、最多盗塁数はアメリカン・リーグで22年の35から23年は67に、ナショナル・リーグでは41から73へと激増している。

「正直、盗塁がしやすくなっているという側面はあると思います。昨シーズンからベースも少しだけ大きくなっていて、セーフになる確率も上がっていると思う。でも、大谷選手がこれだけ盗塁数を伸ばせる理由が単純にそこだ、というのは違うと思っています」

成功確率を上げるスピード以外の要素

 青木がその要因として考察するのは、大谷が日本の野球観の中で培ってきた細やかさだ。「どのように1点を取るか」にこだわる日本野球では、走塁ひとつとっても、リードの取り方や帰塁の方法、走路、スライディングなどに工夫を凝らす。

「メジャーには物凄く身体能力が高い選手がいますから、走れる選手は桁外れに足が速い。でも、例えばリードの取り方を見るとめちゃくちゃ狭かったり、構えを見るとクラウチングスタートのようだったり、そこまで緻密ではないんです。身体能力の高い選手はそんなことをしなくてもセーフになってしまいますから。

 大谷選手はスピードがあるのはもちろん、走塁技術が高い分、成功する確率をさらに上げられているのだと思います。日本の野球は細かいですから、そこで培われたものが土台となって数字を伸ばしているのでしょう」

 まず地区優勝、その先のポストシーズンへ熾烈な戦いが続くなか、大谷は記録をどこまで伸ばしていくのか。カンザスシティ・ロイヤルズ時代の2014年にワールドシリーズ出場を経験した青木も、熱い視線を注いでいる。

9月10日発売の「青木世界観」『青木世界観』(青木宣親、尾崎世界観著/文藝春秋刊)は青木と尾崎世界観の共著。*書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

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