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「誰だこれは?」世界最高の馬術大会で衝撃デビューも、五輪では…大岩義明が「10年くらいでメダルを」と考えてから23年間戦い続けたわけ 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2024/09/01 11:04

「誰だこれは?」世界最高の馬術大会で衝撃デビューも、五輪では…大岩義明が「10年くらいでメダルを」と考えてから23年間戦い続けたわけ<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

日本馬術としては「バロン西」こと西竹一以来92年ぶり、団体では初の五輪メダルを獲得した「初老ジャパン」の大岩義明

 最も力を入れて取り組んだのは、鍵を握るクロスカントリーだ。約6kmの起伏に富んだ屋外コースを駆け抜ける中で、生垣などなるべく自然に近い形で置かれた障害を飛び越えていく。障害をクリアすると同時に、決められたタイム内で走るスピードも重要となる。

「速く走りながらいろんな難しい障害を越えていくので、 反射的に身体を動かさないといけない。僕はイギリスに行ってから本格的に始めたようなものなので、実際に走ってみて経験を積むことが第一でした。トップ選手とともに国際大会に出ると、自分の出来ることと、出来ないことが分かってくる。やはり経験のスポーツなんですよね」

全長6kmのコースを歩いて下見

 クロスカントリーのコースを事前に下見できるのは選手だけ。馬は“ぶっつけ本番”で障害物に臨む。だから選手は競技前に徒歩でコースを歩き、ポイントをつぶさにチェックしながら本番での作戦を練る。

「下見は全長で大体6kmくらいあるので、1回歩くのにも時間かかります。そこを何回も何回も歩いて、どこをどんな風に通るか考えていくんです。目をつぶると、パートナーの馬がどんな反応をするのかイメージが湧いてくる。その反応に対してどう対応しようか、ここは少しスピードを落とした方がいいかな、とか。それが本番で実際にどうなったか、ということが毎回経験値として積み重なって、体が勝手に動くようになってくる」

 弟子入りしたホイ氏はシドニー五輪までオーストラリアを総合馬術団体3連覇に導いた立役者だ。世界でも屈指の実力者から手ほどきを受け、競技経験を重ねることで大岩はどんどん力をつけた。

世界最高峰の大会での活躍

 2005年5月、世界最高峰の大会と称されるバドミントン・ホーストライアルズに初出場。世界から15万人もの観客が集まるイギリス屈指の競技会で一躍脚光を浴びた。2日目のクロスカントリーが終わった時点で3位につけ、最終日の障害の終盤までは暫定1位に名を連ねていた。誰も名前を知らないアジア人の大躍進に、観客は騒然となった。

【次ページ】 ドイツでも理論を学ぶ

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