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「めちゃくちゃ楽しいです」打撃開眼! DeNAの新“切込隊長”梶原昂希24歳、ヒット量産のわけは…「打席では棒立ちくらいのイメージで」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph bySankei Shimbun
posted2024/08/26 11:06
苦しいチーム状況の中で奮闘する3年目、梶原昂希
「僕の場合は、体の力の入れ具合ですね。バッティングが不調のときって、上半身も下半身も力が入った状態でボールを待っていることが多くなるので、大事なのはいかにして力を抜くのか。力を入れるのは得意なんですけどね。打席では本当、棒立ちっていうか、ぼーっと立っているぐらいのイメージで、そうするとバットの走りも良くなってボールの見え方も変わってくるんです」
以前の自分では気づけなかったこのポイントを指摘してくれたのが石井コーチだった。結果的にこの気づきがニュースタイルに繋がっていくわけだが、石井コーチは梶原について次のように語る。
力を「抜く」練習
「梶原にかぎらず、今の若い選手は、いかに出力を出すか力の入れ方ばかりに捉われているんです。振る前に力を抜いておかなければ、結果的に力を出すことはできない。確かに梶原の魅力は長打力ですし、伸ばすべき部分なのですが、そこばかりに特化してしまうと見失ってしまうモノもある。三振も多いですし、以前の梶原は“0か100”といった選手でした」
果たしてこのままでいいのか。将来を考え、石井コーチは鈴木コーチと相談し梶原にある練習を提案した。
「それが“ペッパー”だったんです」
石井コーチは言った。ペッパーとは投手が投げ、打者が投手にワンバウンドで打ち返す練習だ。強く打つ必要はなく、絶妙な力加減で確実にポイントにミートさせることが要求される。アマチュアではよく見る練習だが、プロではほとんど見かけることはない。石井コーチは力説する。
「若い選手たちには今こそ必要というか、力を抜くことを覚えるには理にかなっている。強く振ったらピッチャーにワンバンで返せない。とにかく遊び感覚でいいから、そこからやっていこうと提案したら、本人も気に入ってくれたようですね。ティーバッティングもしかり、いかに力を抜いた状態で出来るか。ゲームもその延長でいいよって」
梶原もペッパーの効果を実感している。
「脱力感を馴染ませるにはちょうどよかったんです。それこそ力が入っているなと思ったら、ペッパーをやってからティーに入るのがルーティンになっている感じですね。本当、力を抜いていても打球って飛ぶんだって感覚を掴んだというか、これぐらいでもヒットになるんだなって」
石井コーチは新境地へ歩もうとしている梶原の可能性について語る。