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甲子園で「魔球みたいになっている」京都国際・西村一毅が操る、低反発バットに“効く”球種とは…「フルスイングさせない」秘密を読み解く
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/22 17:19
準決勝まで甲子園23イニング無失点の京都国際・西村一毅(いっき)
京都国際の選手たちの話を聞いていると、彼らのいうとおりかもしれないと感じる。今大会全体を見てみても、総じてチェンジアップを巧みに投げる投手が多かった。躍進を遂げた大社のサウスポー馬庭優太も、投げる割合こそ少なかったが、早実の宇野真仁朗など強打者にはチェンジアップを使っていたし、智弁学園の左エース田近楓雅は3種類のチェンジアップを使い分けてベスト8入りに貢献。大阪桐蔭打線をマダックスに封じた小松大谷の西川大智も、試合の後半からチェンジアップを巧みに投げ分けていた。
智弁学園の田近はいう。
「チェンジアップは落とし方を変えるんですけど、左右関係なく、アバウトに広い幅を持って投げている。思い切り腕を振って投げているので真ん中にいっても打たれない。だから、左バッターでも(死球を当ててしまうことを)心配していなかったです。自信を持って投げれた」
もともとチェンジアップの使い手だったというが、今大会は3つを使い分けた。縦、横、斜めと角度を変えて投げ分ける。田近の場合はこの春からはスライダーが決まるようになり、チェンジアップとのコンビネーションで打者を翻弄。的を絞らせなかったという。
プロやメジャーでも評価が高まっている
智弁学園の小坂将商監督は話す。
「(田近には)その代わりインコースにズバッというようなストレートはなかった。でも、それがなくても、チェンジアップが3種類あるので、上手く投げれていた。スライダーも質が上がって、チェンジアップが生きたと思います」
昨今、プロ野球やメジャーリーグではチェンジアップなどの落ちる球が評価を高めてきている。長打率を低く抑えられるというデータが出ているからである。周知のように、打球を飛ばすためには、スイングスピードが必須条件になる。しかし、球速がストレート系に近いスプリットはともかくとしても、遅いチェンジアップを最初から狙っていく選手はあまり多くなく、ボールが来てから打席の中でスイングを合わせていくということになる。