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「エディー・ジョーンズのラグビー講義」がやはり面白かった…夏の代表5連戦“わずか1勝”でも楽観的なのはなぜ?「矢崎とは真剣に話し合った」 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2024/07/25 17:24

「エディー・ジョーンズのラグビー講義」がやはり面白かった…夏の代表5連戦“わずか1勝”でも楽観的なのはなぜ?「矢崎とは真剣に話し合った」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

7月23日、5試合を終えて総括会見を行ったラグビー日本代表エディー・ジョーンズHC。「このチームには伸びしろしかない」と語った

 会見では、「ジョーンズ先生によるラグビー講義」的な内容がいつものように興味深かった。たとえば、こんな具合だ。

「現代のラグビーでは、ラインアウトからのプレーに加えて、キックリターンからのプレーでおよそ75パーセントを占めます」

「状況判断が求められるのは、セットプレーから4つ目のプレー以降です。3フェイズ目まではある程度、動きは決まっていますから」

「状況判断を磨くためのコーチングは、最も難しいエリアで、選手は経験を積むことが必要です。たとえば、イングランドのSOマーカス・スミス。彼は15キャップあたりまでは厳しい状況が続いていましたが、経験を積むことで成長を見せています」

 会見ではジョーンズHCのラグビー観が聞けるのが、記者にとっても大いに刺激になる。そしてこのサマーテストでのプレーぶりを、次のように評価した。

アタックのキャリーメーター
考えていたようなゲインが出来た。アタックは素晴らしい。

ディシプリン・規律(反則)
ジョージア戦でレッドカード、イエローカードが出てしまったが、おおむね良好。

エリア・マネージメント
“constantly poor”という表現で、エリアについてはいつも劣勢。経験が必要。

ターンオーバー
個人のハンドリングエラーが多すぎる。また、イタリア戦では27回のターンオーバーがあり、このうち7回がラインアウトから。コール(サインを出すこと)をしているワーナー・ディアンズは、コールを学んでいる段階だ。

相手ゴール前のアタック
敵陣5mに入ったら、ゲームは違う局面に入る。相手ディフェンスが15人並ぶ状態になるからだ。今回は「オーソドックスなパワームーブ」でこじ開けようとしたがうまくいかず、これからイノベーションが必要。

速さではなく「力」に頼っていたジャパン

「相手ゴール前のアタック」についての話を聞いて、考えるところが多かった。

 エディー・ジャパンが標榜するのは「超速ラグビー」である。相手を速さと早さで圧倒する。

 しかし、トライを目前にしてからのアタックは力に頼っていたことになる。

 ここで、私が「頼らざるを得ない」という表現を選ばなかったのは、まだトライに至るフィニッシュの工夫に手をつけていないからだ。とりあえず、パワーで押せる人材が誰か、観察していたのではないか。8月からのパシフィックネーションズカップ、10月からのオータムテスト・シリーズでは、創造性のあるアタックが絶対に必要だろう。それはファンがチームを応援する源ともなるからだ。

 そしてもうひとつ、2027年のW杯に向けてジョーンズHCが重視しているのは「若手を成長のファストトラックに乗せること」だ。

【次ページ】 全5試合に出場した矢崎由高

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