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「エディー・ジョーンズのラグビー講義」がやはり面白かった…夏の代表5連戦“わずか1勝”でも楽観的なのはなぜ?「矢崎とは真剣に話し合った」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/07/25 17:24
7月23日、5試合を終えて総括会見を行ったラグビー日本代表エディー・ジョーンズHC。「このチームには伸びしろしかない」と語った
今回、お眼鏡にかなったのは、早稲田大学2年生の矢崎。5試合すべてに出場、テストマッチで3キャップを獲得した。
「矢崎はアマチュアでありながら、大きな成長を遂げてくれました。これから30キャップ、40キャップを積み上げていくのが楽しみでなりません」
一方で、ジョーンズHCは会見の席上で「状況判断は“ローレベル”でプレーしていては磨かれません」とも話していた。
どうやら、矢崎は夏合宿から大学に戻るようで、それは決してヘッドコーチが望んでいることではないだろう――そう想像したので、「大学生たちがチームに戻ってから期待することは?」と質問をした。すると、「昨日、矢崎と真剣な話し合いをしました」という回答があり、ジョーンズHCはこう続けた。
「矢崎には、インターナショナルでプレーするにふさわしいスタンダードでプレーし続けることを求めました。そして早稲田を引っ張っていく存在になり、大学ラグビーのレベルを上げていって欲しい」
そして今後8年間、「日本の未来は、大学生の育成にかかっている」と話した。果たして大学生はファストトラックに乗れるのか、ジョーンズHCは観察を怠らないだろう。
矢崎をはじめ何人かの大学生が必要不可欠なピースになれるか、これは2027年W杯の成否に大きく関わる。
PNCは“秋”に向けたセレクション
ここで代表はいったん解散するが、8月下旬から9月にかけては『パシフィックネーションズカップ(PNC)』が行われる。
8月25日 vsカナダ(バンクーバー)
9月 7日 vsアメリカ(熊谷)
9月14or15日 準決勝(秩父宮)
9月21日 3位決定戦・決勝(花園)
10月下旬から11月にかけてニュージーランド、欧州に渡ってフランス、イングランドとの対戦が控えており、PNCはそのセレクションとなる。
サマーテストは、世代交代にともなう厳しい現実を垣間見せてくれた。オータムテストは、これまで勝ったことのない強豪国との対戦ばかりで、苦戦は免れない。
強化に「魔法」は存在しない。それでも、光明を見出したい。
2024年秋、どんなラグビーが待っているだろうか。