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1位ピアストリがなぜ後回し? ハンガリーGPで1−2フィニッシュのマクラーレンが採った不可解なピット戦略の真相 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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posted2024/07/24 11:00

1位ピアストリがなぜ後回し? ハンガリーGPで1−2フィニッシュのマクラーレンが採った不可解なピット戦略の真相<Number Web> photograph by Getty Images

決勝レースで1−2フィニッシュのピアストリ(右)とノリスが、フロントロー独占の予選後に見せた笑顔

 ステラがこのときノリスのライバルと見ていたのは、3番手を走行していたルイス・ハミルトン(メルセデス)だった。そのハミルトンが先に最後のピットストップを行ったことでノリスとの差は徐々に縮まりつつあった。だからこそ、ハミルトンとの差にまだ余裕のある段階でピットインさせ、確実にハミルトンの前に戻して2番手をキープしようとした。

 つまり、先頭を走っていたピアストリには4番手から大逆転を狙っていたフェルスタッペンをマークさせ、2番手のノリスを3番手のハミルトンの前でレースさせることで、マクラーレンは確実に1-2フィニッシュさせる戦略を採っていたわけだ。

 しかし、それは自分たちのドライバーをも混乱させる結果となった。先頭に立った後でチームオーダーが発令された時、チャンピオンシップ争いでトップをゆくフェルスタッペンとの差を少しでも縮めたいノリスは、にわかに指示を受け入れられず、ためらっていた。

マクラーレンに覚醒の予感

 最終的にノリスが状況を飲み込んでトップの座を譲り、再びリーダーとなったピアストリがトップでチェッカーフラッグを受け、初優勝を遂げた。2位のノリスはチームメートの勝利を祝福しながらも、「自分たちで、あまりにも状況を難しくしてしまったと思う。最初にオスカーをピットインさせておけば、すべては丸く収まったのに……」と、チームの戦略に疑問を呈した。

 ノリスがそう言うのも無理はない。なぜなら、この日のマクラーレンは3番手以下に12秒以上の差をつけて1-2フィニッシュを飾っており、フェルスタッペンもハミルトンも敵ではなかったから。にもかかわらず、マクラーレンはなぜ彼らの影に怯えていたのか。それはマクラーレンが1シーズンで2勝以上を挙げるのが、じつに12年ぶりだったからではないだろうか。

 勝ち方を忘れていたがごときマクラーレンがこの勝利で覚醒し、常勝軍団へと復活すれば、今回の「奇妙に思える戦略」は意味のあるものとなるかもしれない。

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