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エイドリアン・ニューウェイのレッドブル離脱にF1界騒然! ハミルトンやアロンソも熱望する“空力の天才”は来季なにを目指すのか?
posted2024/05/10 11:03
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images / Red Bull Content Pool
マイアミGP開幕2日前の5月1日、レッドブルで技術部門のトップとしてチーフテクニカルオフィサーを務め、空力の天才と称賛されているエイドリアン・ニューウェイが2025年の第1四半期、つまり3月限りでチームを離脱することが発表された。
大学時代に航空宇宙工学を専攻していたニューウェイが、F1のキャリアをスタートさせたのは1980年。その後、F2やインディカーの設計にも携わっていたニューウェイは88年に注目を集める。この年、ニューウェイがデザインしたマーチ881は非力なジャッドV8エンジンを搭載していたものの、優れた空力特性を持ち、16戦15勝を達成したマクラーレン・ホンダをコース上でオーバーテイクしたこともあった。
この才能に目をつけたのがウイリアムズだった。ウイリアムズでチーフデザイナーとしての処女作となった91年のFW14がニューウェイにとってのF1初勝利を挙げると、92年のFW14Bはタイトルを獲得。以後マクラーレン、レッドブルを渡り歩いたが、どちらのチームもチャンピオンに導き、合計12回のコンストラクターズタイトルと合計13回のドライバーズタイトル獲得に貢献した。
チームからのリリースで、ニューウェイはその輝かしいキャリアを振り返りながら、共に戦った者たちに感謝の言葉を贈った。
「幼い頃から、速いマシンのデザイナーになりたいと思っていた。私の夢はF1のエンジニアになることだったが、幸運にもその夢を現実にすることができた。さらにレッドブルという新興チームが常勝軍団に成長するうえで、重要な役割を果たせたことはとても光栄なことだ。いまはそのバトンを後進に譲る時が来た。また、私自身も新たな挑戦をするよい機会だと感じている。過去18年間のレッドブルの旅で一緒に働いてきた多くの素晴らしい人々の才能、献身、そして努力に感謝したい」
19シーズン13タイトルの偉業
2005年からレッドブルのチーム代表を務め、今季を含めば06年から19シーズン、ニューウェイと共に戦ってきたクリスチャン・ホーナーは、その偉業をこう讃える。
「過去20年間のレッドブルの栄光のすべては、技術的な舵を握ってきたエイドリアンの手によってもたらされたといっても過言ではない。彼のビジョンと才能のおかげで13ものタイトルを獲得することができた。F1の枠を超え、より幅広いインスピレーションをグランプリマシンの設計に反映させる彼の卓越した構想力、変化を受け入れルールの中で最もやりがいのある分野に焦点を当てる彼の驚くべき才能、そして勝利への執拗な決意は、故ディートリッヒ・マテシッツ(レッドブル創業者)をはじめ、想像以上の力をチームに与えてくれた。彼がチームにもたらしてくれたすべてのことに、われわれは永遠に感謝し続けるだろう。彼は真のレジェンドとしてチームを去る」