核心にシュートを!BACK NUMBER

《51戦連続不敗》欧州サッカー異常な大記録を「常勝でもないクラブ」が達成のナゼ…シャビ・アロンソ42歳とレバークーゼン革命の内実 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

PROFILE

photograph byTaisei Iwamoto

posted2024/05/27 11:10

《51戦連続不敗》欧州サッカー異常な大記録を「常勝でもないクラブ」が達成のナゼ…シャビ・アロンソ42歳とレバークーゼン革命の内実<Number Web> photograph by Taisei Iwamoto

無敗でのブンデスリーガ制覇を達成し、シャーレを掲げるシャビ・アロンソ監督。決して常勝ではないクラブがなぜこの偉業を成し遂げたのか

 JVは複数の企業が強みを持ち寄って、共同事業を行なうというビジネス用語だ。この用語が何故ふさわしいかといえば、アロンソはジモン・ロルフェスGMと二人三脚で、クラブのビジョン作りや選手編成にも大きく関与することで、最強のドイツ王者を作り上げたから。

 アロンソ監督とロルフェスGMは、レバークーゼンというクラブにとっての「成長」の意味を変えた。従来のレバークーゼンは選手が成長して、優勝やCLを毎年争えるような国内外のビッグクラブへと羽ばたくための、いわば登竜門的なクラブだった。

 バラック、ゼ・ロベルト、ルシオ、ベルバトフ、ビダル、ソン・フンミン、ハバーツ……。レバークーゼンから羽ばたいた後に、名前を売ったり、タイトルを獲ったりした選手は山のようにいる。

 しかし、昨シーズン10月にアロンソが就任してから、その方針は「みんなで成長して、優勝を目指す」に変わった。

「成長のためのクラブ」のイメージを取り除こう

 アロンソとロルフェスGMは相談した上で、あえて「経験のある選手を獲得する」方針を立てた。この新戦略について『スポーツビルト』誌がこのように説明している。

「クラブはタイトルを争い続けて、『成長のための(通過点としての)クラブ』というイメージを取り除こうとしている。若い選手に特化するのではなく、経験のある選手、責任のある選手を連れてくることにしたのだ」

 レバークーゼンは過去10年以上も「30歳未満の選手しか獲得しない」というルールを設けていた。それまでの10年で唯一の例外、2013年に32歳のスパヒッチを40万ユーロで獲得したときだけだ。

 だが、2023年2月にその方針をとりやめた。その意味を、昨夏に31歳になるタイミングで加入したホフマン(当時ドイツ代表)はこう語っていた。

「チームを引き上げるために責任を持つことが僕らのようなベテランの役割だ。経験のある選手がチームに加わることで、若い選手たちのクオリティを引き上げられる」

 若手の成長を促すために本当に必要なことは、彼らに出場機会を保証することではない。お手本となるような存在をロッカールームに置くことだと、アロンソたちは考えた。それまでは、のびのびとプレーさせられる環境があった一方で、規律面では緩んでいるというのをわかっていたからだ。

「ロッカールームの保安官」に与えられた3つのタスク

 実際、トップチームのディレクターとして、それまでクラブの育成部門長だったアイヒンを起用した。

【次ページ】 ベテランのジャカがもたらした「厳しさ」

BACK 1 2 3 4 NEXT
#レバークーゼン
#シャビ・アロンソ

海外サッカーの前後の記事

ページトップ