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「もしメダリストになっていなかったらどんな人生だったか…」日本男子卓球界の歴史を変えた水谷隼が振り返るオリンピックで勝つことの意味
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKiichi Matsumoto / Getty Images
posted2024/06/05 10:00
リオ2016で日本卓球界初のシングルス銅メダルを獲得した水谷隼 ©IOC-All Right Reserved.
混合ダブルス決勝、苦手なプレーを選択した理由
「メダルを獲るのにふさわしいと感じていました」
と言えるまでになって臨んだリオ2016。まず迎えたシングルスでは勝利を続ける。準決勝で馬龍(中国)相手に敗れたものの、3位決定戦に勝利。その瞬間、床にひざを突くと両腕を宙に突き上げた。
「リオまで大変な道だったので、努力が実った喜びを感じたのを覚えています」
続く団体戦でも決勝の中国戦で勝利したのも含め、水谷自身は初戦から全勝。エースとしての役割を全うし、チームを銀メダルに導いた。
歴史の扉を開けたのがリオ2016なら、さらに大きく花開かせたのが東京2020だった。混合ダブルスと団体戦に出場した水谷は、伊藤美誠とともに臨んだ混合ダブルスでついに頂点に立つ。
決勝の相手は過去4戦4敗の許昕/劉詩雯(中国)。ゲームカウント3-3で迎えた最終ゲームの1本目を獲れたことが勝負を分けたと言う。
「今までずっと同じやり方で負けてきたけれど、それを変えることができて獲れた1点です。伊藤選手がサービス、僕が3球目で、相手のレシーブを僕は苦手なバックハンドでストレートに打ったんですね。中国選手はクロスに来ると思っていて一歩も動けなくてそのままボールが抜けていきました。ふだんだったら絶対クロスに行くんですよ。いちばん自分がしなさそうなプレーをしましたね」
苦手なプレーの選択はリスクを伴う。それでも選択した理由をこう語る。
「それまでいいプレーをしても勝てなかった。同じことをしても同じ結果になってしまうと思っていました。あとは打つ勇気と自分の技術。覚悟を決めてやりました。伊藤選手も絶対に予期していなかったと思います」
他の3人が予想しえなかったプレーは中国の2人に動揺をもたらした。結果、8-0まで得点を重ねて大きくリード。最後は11-6、日本卓球界悲願の打倒中国を果たし金メダルを手にした水谷は団体戦でも銅メダルを獲得して終えた。
男子がスポットライトを浴びた、という嬉しさ
今は各メディア出演をはじめ幅広く活躍する水谷は、リオ2016、東京2020を振り返ったあと、こう語った。
「もしメダリストになっていなかったらどんな人生だったか……あまり想像できないですね。たまに考えることはあるんですよ。メダルを獲っている獲っていないでもぜんぜん違うし、同じメダルでも金メダルか他の色のメダルかでも違うと思います。メダルを、金メダルを獲ったからこそこの仕事があるなっていうのは本当にたくさんあります。メダルを獲っていなかったら何もしてないかもしれないですね。家でぼーっと外出せずゆっくり生活していた可能性も全然ありますし」
水谷自身の運命を変えただけにとどまらない。
「女子は昔から(福原)愛ちゃんを筆頭に、石川佳純選手もそうですし注目されていて、卓球と言えば女子、みたいなイメージがずっと定着していたと思います。やっぱり男子は全く人気がなかったですし、テレビ放映も女子がメインでやっていて、試合も試合以外のニュースも男子が放送されることは一切ない時期がありました。そういう意味で、自分がメダルを獲ったことによって男子がスポットライトを浴びたのがめちゃくちゃうれしいですね。あの大舞台は、アスリートの人生を変える場所だなっていつも思います。そこで勝つか負けるかによって自分の将来、家族の生活、その競技の未来を変える可能性がある舞台だと本当に思います」
リオ2016のシングルスや東京2020の混合ダブルス。水谷の輝かしい実績は、何度も見返したい、数々のシーンとともに記憶されている。
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