酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「外野手・大谷翔平」は実現するか…ベッツとのMVP争い+フリーマンやスミスに“DH休養”などドジャースもメリット、ただ本人の疲労は?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2024/05/04 06:02
「野手専念」である今季、大谷翔平が外野を守るシチュエーションを目にする機会は来るのか
Baseball Referenceは打撃でのWARではベッツ2.8(1位)に対して大谷は1.7で4位。だが、守備でのWARはベッツが0.7で4位なのに対し、大谷はそもそも守備に就いていないから加点はなし。守備位置での「補正」の考え方でDHの守備WARは若干だがマイナス評価になっている。FangraphsのWARでも同様の評価だ。
WARの指標が重要視される今のMLBでは守備に就かない「DH」の評価は守備に就く選手よりも低くなる傾向にある。
MLBでDH制が導入されたのは1973年だが、以後、DHでMVPを獲得したのは1979年のカリフォルニア・エンゼルス、ドン・ベイラーだけだ。この年ベイラーは、全162試合に出場し36本塁打、139打点(打点王)、打率.296、65試合でDHとして出場した。そしてMVP投票ではオリオールズのケン・シングルトンを破ってMVPに選ばれた。
当時はWARの概念がなかったこともあってDHがMVPに選ばれたが、それ以降、DH専門の選手でMVPに選ばれた選手はいない。
どんどん進化するMLBではあるが「野球選手は打って守ってチームに貢献するもの」というオーソドックスな概念がいまだに生きているのではないか――と感じる。
DHの選手は野球殿堂でも評価が低い傾向が
野球殿堂入りの投票でもDHでの出場試合数の多い選手は、評価が低い傾向にある。
2001年イチローがシアトル・マリナーズに移籍した時期に、マリナーズの絶対的な中軸打者だったエドガー・マルチネスは首位打者2回、打点王1回、通算309本塁打。最優秀指名打者に5回選出されている。出場2055試合の内、1403試合がDH。
「ミスターDH」と言われ、そのシーズン最も活躍したDHには「エドガー・マルチネス賞」が授与されるようになるなど、すでに歴史的な存在なのだが、殿堂入り投票ではずっと票が集まらずエントリー10年目の2019年になってようやく殿堂入りした。
今後、大谷が好調を維持したとしても、守備での評価がマイナスであることを考えれば、ベッツなどライバルよりはるかに好成績を上げない限り、2年連続のMVPはあり得ないことが予想される。
フリーマン、スミスのDH起用のためにも外野を守る?
シーズンに入ってから、大谷翔平は試合前に、キャッチボールをするシーンがしばしば報じられる。昨年9月に手術をした右肘の状態が順調であることをうかがわせるが、最近は、外野の芝生でコーチが打つフライやゴロを捕るシーンも報じられている。
またロバーツ監督はシーズン終盤で大谷が「外野を守る可能性」にも言及している。