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山本由伸25歳と「ドジャース捕手の相性問題」“打てるが強気すぎスミスより守備型バーンズ”の現状…DH大谷翔平も“パズルの要素”なワケ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2024/05/02 06:02
開幕して1カ月強が過ぎた山本由伸。ドジャースでの投球内容を精査する
ここで紹介した投球データはMLB公式サイトの「スタットキャスト」による。トラッキングシステム「ホークアイ」を基幹とするシステムが球種を判断している。
NPBの球種データとは、球種の解釈が異なるために単純な比較はできない。ただ、NPB時代の山本はフォーシーム40%、フォーク(スプリッター)25%、カーブ15%、カットボール10%前後という感じだった。MLBに来てカーブの比率が急増しているのだ。
実は初戦である韓国でのパドレス戦は、フォーシーム14球についでカットボールを11球投げていた。カーブは10球だったが、2戦目のカージナルス戦ではフォーシーム29球、カーブ17球に対しカットボールは1球だけ。カットボールは以後も1試合で数球しか投げていない。
MLBではカーブが有効で、速球やスプリットに、カーブを織り込むことで効果的な投球の組み立てができるようになったからだろう。
2人の捕手でかなり違う投球の組み立てとは
実はウィル・スミスとオースティン・バーンズという2人の捕手は、投球の組み立てもかなり違っている。
スミスは301球を受けた中で、フォーシーム(109球36.2%)についでスプリッター(89球29.6%)を投げさせ、カーブ(80球26.6%)の順だが、バーンズは177球を受けてフォーシーム(74球41.8%)についでカーブ(54球30.5%)、スプリッター(42球23.7%)の順だ。
山本のフォーシームは平均153.5km/h、スプリッターは144km/h前後、カーブは125km/h前後だが、バーンズのほうが緩急をつけていることになる。
筆者は背番号「43」時代から山本由伸を見ているが、彼の最高の球は途中までフォーシームとほとんど軌道が変わらないフォーク(スプリッター)ではないかと思っている。千賀滉大や平野佳寿のような落差の大きい「おばけフォーク」ではなく、小さな変化量でバットの芯を外す球だ。
日本では空振りもたくさん奪ったが、MLBの各打者はこの球にあまり手を出さずボールを見極める。だからストライク率57.3%と良くない。またカットボールも見極められる。
そこでカーブということになるのだろうが、速球と見間違うことが少ないカーブが常に通用するとは思えない。スプリッターやカットボールなどを活用するときが来るだろうし、捕手には柔軟なリードが求められるだろう。
“打てるが強気すぎるリード”とDH大谷
ウィル・スミスとオースティン・バーンズの配球を見ていて、もう一つ気になったのは、スミスの「強気すぎるリード」である。