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現役最後の打席で浴びたブーイング 「MLB通算175ホームラン」松井秀喜“最後の1年”は逆境の連続だった…それでもアメリカで愛された人柄
posted2024/05/01 17:03
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
長いあいだ野球記者をしていると、カレンダーを見て思い起こすことがある。
今から12年前の2012年5月1日。タンパベイ・レイズの本拠地トロピカーナフィールドでは松井秀喜の入団会見が行われていた。巨人、ヤンキースと日米の伝統球団でプレーし、数えきれないほどの勲章を手にしてきたエリート選手は切実な思いを語っていた。
「ただプレーがしたい。野球がしたい。またプレーするチャンスをいただいたレイズに対する感謝の気持ちでいっぱいです。あとはメジャーに上がって頑張るだけです」
アスレチックスからFAになった前年10月以降、松井の元へは契約オファーがなかなか届かなかった。本人は愛着あるヤンキースとの再契約を求めたものの、獲得リストにその名はあったが具体的オファーまでには至らなかった。キャンプイン、開幕を迎えてもオファーがない。1カ月遅れでようやく届いた唯一のオファーがレイズからのマイナー契約。メジャーでプレーできる保証はなかった。
現役最後の打席で浴びた、地元ファンからのブーイング
5月29日にメジャー昇格を果たし、いきなり本塁打を放った。誰もが“ゴジラ復活”を喜び、今まで通りの活躍を期待した。しかし後が続かなかった。38歳を迎えた彼の左膝の状態は思わしくなく、出場わずか34試合、与えられた打席数103、最後は18打席ノーヒットが続いた。メジャー10年目の成績は打率.147、2本塁打、7打点。戦力外通告を受けたのは7月24日、ボルチモアでのことだった。
現役最後の出場となったのは7月22日のマリナーズ戦だった。1対2で迎えた9回2死一、二塁。代打として『背番号35』の松井の名が告げられた。
長打が出れば逆転。松井起用には最良の場面だったが、ここまでの不振が影響し地元ファンからはブーイングが起こった。結果は遊飛でゲームセット。ブーイングは更に大きくなった。
試合後のクラブハウスは重苦しい空気に包まれていた。“クビ宣告”はあるのか。松井を追う報道陣は戦々恐々としていた。