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大学野球PRESSBACK NUMBER
なぜ佐々木麟太郎は「合格率3%」スタンフォード大に入れた?…日本人が知らない“超名門”合格のウラ話《運動部の現役日本人コーチが解説》
text by
河田剛Tsuyoshi Kawata
photograph by(L)Tsuyoshi Kawata、(R)JIJI PRESS
posted2024/04/09 11:01
スタンフォード大への進学を表明した花巻東高の佐々木麟太郎。左はスタンフォード大学内のアメフト部関連施設の様子
コロナ禍の影響もあり、語学テストのスコアが不要に
前述のようにスタンフォードのケースでは、5万人以上の応募から1600人を選ぶというとんでもない労力の審査作業が発生します。出願者1人ひとりの成績や、高校での評価、地域でのボランティア活動など、幾つかのポイントをもとに評価していくわけです。
そして数年前までスタンフォードを含めアメリカの大学の多くはこのアプリケーションに当たって、共通学力テストであるSATやACTのスコアや、留学生にはTOEFLなどの語学力のスコアが必要でした。
ただ、近年はテストの際に貧富の差が大きく影響することなどを理由に、そもそもスコア提出が必要ない大学も増えていました。そこにコロナ禍が起き、その傾向に拍車がかかりました。スタンフォードでも2021年からこういったスコア提出が不要になったのです。結果的に現在は推薦状と小論文、課外活動での成績といった書類のみでの勝負になりました。
これは端的に言えば「普通の秀才は要らない」という大学側の思惑でもあります。
ペーパーテストのスコアが秀でているだけでなく、例えば数学オリンピックで評価を受けるような一芸や、数か国語が喋れるという国際性、他にも親族に大卒者がいない環境にも関わらず好成績を残した等々、尖った実績をもった学生を確保したいと考えているわけです。
その中に「アスリートとしての実績」というものも含まれます。もちろんGPA(日本で言えば評定平均にあたる)と言われる高校時代の成績を4点満点で評価したスコアが満点近いことは大前提ですし、英語能力は「もはや当然」と考えられている節はあるのですが、そもそもテストを受けるためのハードルが高かった日本人アスリートにとってはプラスに働いたことは間違いありません。
誤解しないでほしいのが、もちろんこれは「簡単に入学できるようになった」ということではありません。あくまで佐々木選手の学業面、人間面での総合的な評価が高かったことと、入試制度の変化が上手くかみ合ったということだと思います。
私もフットボール部のリクルーティング業務を通じて、アスリートとして高い能力を持ち、チームに欲しいと思った高校生が入試課の選考によって合格できなかったケースは数えきれないほど見てきました。