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総合格闘家と銀行頭取による異色の対談が実現。目標、挫折、プレッシャー…をテーマに彼らは何を語り合ったのか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/04/19 11:00
左から総合格闘家・井上直樹選手、横浜銀行・片岡達也頭取
苦手な減量を乗り越えるコツは、チャーハンの鍋振り動画
片岡 もうすぐ井上選手は試合を控えていますね。(*取材日は、2024年3月上旬)
井上 そうなんです。今は試合に向けた減量に取り組んでいるのですが、実は減量が凄い苦手でして。だから始める前は減量できない気がするんですけど、絶対にやらないといけないことだからっていう気持ちに持っていきます。
片岡 減量が苦手というのはちょっと意外でした。
井上 ご飯が食べたくても食べられないので、たとえばチャーハンの鍋振り動画を見たりして気を紛らわせたりします。卵を入れて、ご飯入れて、この人は鍋をこう振るんだって、違う研究を始めてしまうんです(笑)。頭取も気分転換したり、リフレッシュしたりすることはありますか?
片岡 私は5年くらい前から登山を始めました。頂上までの道のりは自分1人の時間になるので、いろんなことを振り返ったり、考えたりできます。かっこいい言葉で言わせていただくと、自分との対話ですかね。でもそのうち息が上がってきて、本当にこれ頂上に行けるのかなって思っていると、そのうちに頭のなかを空っぽにできるんですよね。今は頭取という立場になってあまりできていないんですけど、結構おすすめです(笑)。
井上 僕の場合も、あまり総合格闘技のことばかり考えすぎてしまわないように、そういう切り替えみたいなものは自然とできている感じはします。
片岡 先ほど負けたら2、3日は振り返るという話がありましたけど、リセットする力というのは大事ですよね。あとはその場の適応能力。想定外のことも当然起こってくるので。続ける、繋げるという意味ではこういったものも大切ですよね。
井上 僕もそう思います。
総合格闘家と銀行の異例のタイアップをキッカケに、地域の応援が活性化
片岡 さて井上選手のこれからの目標を教えてください。
井上 RIZINでベルトを懸けた戦いをしていきたいと思っていますし、そしてUFCに戻って活躍できることを変わらず目標にしていきたいと考えています。
片岡 「ツヅク、ツナゲル」プロジェクトはアスリートの力が地域社会の活力になることも目指しています。井上選手は横浜に拠点を置いて活動されています。
井上 港南台にあるジムなどで練習していますが、地域の方々には試合のポスターを貼ってもらったり、声を掛けてもらったりと、いろいろと支えていただいています。
片岡 このプロジェクトのことも話題に出ますか?
井上 はい(笑)。総合格闘家と銀行のタイアップなんて異例だと思いますから、周りの人も「凄いな」って。地域の方々にも、より応援してもらっているような感じもあります。
片岡 このプロジェクトを通じて、井上選手のひたむきな努力や信念がより多くの方に伝わればいいなと思っています。ぜひこれからも挑戦を続けてください。スポーツもビジネスも同じで、熱い思いを持ち続ける強い意志こそが大切なんだなってあらためて思うことができました。
井上 僕のほうこそ力をいただきました。みなさんに喜んでもらえるように、目標に向かって自分らしく頑張っていきたいと思います。