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“異常な勝負強さ”は将棋で培ったからこそ…二刀流雀士・鈴木大介49歳の“デカく勝つ麻雀論”「ツキがなかったから負けた、でいいのか」

posted2024/03/10 11:02

 
“異常な勝負強さ”は将棋で培ったからこそ…二刀流雀士・鈴木大介49歳の“デカく勝つ麻雀論”「ツキがなかったから負けた、でいいのか」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

雀士と棋士の二刀流である鈴木大介九段。その勝負哲学は、競技を飛び越えて不変のものである

text by

曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

PROFILE

photograph by

Hideki Sugiyama

“将棋と麻雀の二刀流プロ”として、2023シーズンからMリーグに参戦している鈴木大介。青春時代に奨励会と並行して「雀鬼会道場」で腕を磨き、現代麻雀の潮流からすれば異質ともいえる雀風でトッププロたちと鎬を削る頭脳戦のスペシャリストは、不確定要素に満ちた麻雀における「強さ」をどう定義しているのか。将棋と通じる勝負術や、AI時代の麻雀の可能性について語った。(全3回の3回目/第1回第2回も)※文中敬称略

麻雀最強戦優勝に“1期抜け”でリーグ戦昇級

 プロ雀士を目指した経歴を持つ小説家の宮内悠介は、麻雀を題材とした短編「清められた卓」(東京創元社『盤上の夜』所収)において、“麻雀のプロ”という人種をこんなレトリックで表現した。

《囲碁や将棋のプロを、空を舞う大鷲の類いに喩えるならば、彼らは、痩せこけて地を這う肉食獣である。だからこそ、また格別の人間的な妙味が宿るのだ。》

 だとすれば、プロ棋士でありながら日本プロ麻雀連盟に所属するプロ雀士でもあり、「BEAST Japanext」の一員としてMリーグに参戦する鈴木大介は、空を舞う大鷲と地を這う肉食獣、両方の性質を併せ持った“猛獣”だと言えるかもしれない。

 タイトル戦の最中にも卓を囲んだという十五世名人・大山康晴を筆頭に、将棋界には古くから麻雀愛好家が多い。2023年9月には井出隼平が日本プロ麻雀協会に入会し、鈴木に続く2人目の“二刀流プロ”となった。またタイトル2期の広瀬章人、女流棋士の香川愛生は、先述の宮内悠介と2020年のオープントーナメント「麻雀最強戦」で対局。オーラスに香川が役満・国士無双を宮内に振り込むという名場面も生まれた。

 並み居るプロ棋士のなかでも、麻雀における鈴木の実績は突出している。「麻雀最強戦」では2019年に優勝を果たし、2022年、2023年もファイナリストとして決勝卓に進出。またB2リーグから初参戦した日本プロ麻雀連盟のリーグ戦(鳳凰戦/A1~E3の13ランクに分かれており、B2は上から4番目)でも、“1期抜け”でB1への昇級を決めた。

将棋と麻雀、ふたりの師匠から学んだ勝負の極意

 とりわけ、半荘1回で勝負が決まる「麻雀最強戦」のような短期決戦において、鈴木は驚異的というほかない勝負強さを示している。偶然が結果を大きく左右する麻雀という競技で、なぜこれほど明確な“強さ”を発揮することができるのか。

【次ページ】 将棋と同じで100歩差でも半歩の差でも、勝ちは勝ち

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