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“異常な勝負強さ”は将棋で培ったからこそ…二刀流雀士・鈴木大介49歳の“デカく勝つ麻雀論”「ツキがなかったから負けた、でいいのか」 

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曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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photograph byHideki Sugiyama

posted2024/03/10 11:02

“異常な勝負強さ”は将棋で培ったからこそ…二刀流雀士・鈴木大介49歳の“デカく勝つ麻雀論”「ツキがなかったから負けた、でいいのか」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

雀士と棋士の二刀流である鈴木大介九段。その勝負哲学は、競技を飛び越えて不変のものである

「そのあたりの勝負勘は、将棋で培った部分もあると思います。相手が日和っているときに一歩前に出ることであったり、とにかく先手先手で打っていく姿勢であったり……。チェスにしてもポーカーにしても、世界的なトッププレーヤーの多くはアグレッシブで、そのスタイルで高いレーティングを保持していますからね。それに比べると、日本人はゲームに臨むうえでの基本のバランスが悪いというか、いささか守備的すぎる印象があります」

 とにかく前に出ること、そして失敗を恐れないこと。この教えは、将棋の師匠である大内延介から授かったものだという。

「前に出たうえで失敗するのは自分の実力。後ろに下がってそのままやられてしまうのが一番いけない」「将棋盤に絵を描くように指せ。小さい将棋を指すな。美しい絵を描くように指せば、そのうち勝てるようになる」――鈴木はそんな言葉を反芻しながら、“雀鬼”と呼ばれる麻雀の師匠の教えとの共通項をあげた。

「雀鬼会でも、桜井章一会長が同じような話をしてくれました。『とにかく後ろに下がるな。負けてもいいから一歩でも前に出る努力を続けなさい。それが麻雀以外のところで必ず活きるときがあるから』と。そういった教えが、勝負師としての感覚の根底にあるのは間違いないですね」

将棋と同じで100歩差でも半歩の差でも、勝ちは勝ち

 今季のMリーグにおける鈴木のスタッツ(2024年3月8日時点)で特に目を引くのは、36人中3位の半荘ベストスコア「8万4400点」と、同3位の平均打点「7810.44」だろう。放銃を恐れず力強く前に踏み込み、勝負どころで倍満やハネ満といった大きなアガリをものにするスタイルは、1年目にして明確な個性として定着している。

 大胆な構想から高打点のアガリを決める“極意”のようなものはあるのだろうか。鈴木は「半歩だけ勝てばいいんです」と、こともなげに切り出した。

「たとえば、自分が圧倒的に有利な手、大きな利益を得られる可能性のある手を持っているとき、安易に“利確”してしまうのは損じゃないですか。あくまでも対人ゲームなので、常に3人の相手の動きを見ながら、収益を最大化する道を探っていく。すでに10歩前にいるのに、怖いからといって20歩も30歩も先行する必要はないんです。局単位で考えるなら、最後に半歩だけ勝てばいい。将棋と同じで、100歩差をつけて勝っても半歩の差でも、勝ちは勝ち。相手がアガる一手前が、自分のアガリのベストタイミングだと思っています」

【次ページ】 「ツキがなかったから負けた」でいいのか?

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