濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
学級委員長も務めた「高校生レスラー」 吏南(17歳)がタイトル戦で見せた“肩書き以上の可能性”…来春の卒業後はプロレス専念へ
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/03/08 17:00
天咲光由(21歳)に卍固めを仕掛ける吏南(17歳)
会場には英語と保健室の先生の姿も
宇都宮でのタイトルマッチは、普段とは違う感覚だったそうだ。大会開始前の調印式、ふと客席を見ると自分を応援するうちわを掲げている観客がいた。
「それが高校の先生で(笑)。英語の先生と保健室の先生。保健室はあんまり行かないですけど、先生とはよくしゃべるんですよ。家族、親戚もいるし、いつもとは違うプレッシャー、責任感がありましたね」
試合は吏南が木村花から受け継いだ得意技、ハイドレンジアで勝利。内容としては天咲の必死さが光った。DDTのバリエーションをはじめ技の精度が上がっていることもあるが、何より感情を全面に出すようになった。ただ見方を変えれば、吏南は天咲がいま持っている力をすべて受け止めた上で6度目の防衛に成功したということになる。
「タイトルマッチの前からタッグでやり合って、手の内を知った状態だったから内容が濃くなった面もあるでしょうね。いつもはそれがなかなかできないんですよ」
これまでのタイトルマッチでは、前哨戦がほとんどできなかったと吏南。学校があるため地方遠征ができず、試合の機会自体が限られてしまうのだ。昨年11月、若手興行『New Blood』の大阪大会が、初めての地方での防衛戦だった。
「New Bloodは金曜日の開催だから、東京でやる時も学校を早退してるんですよ。だから金曜6時間目の『総合』の単位が厳しくなったり(笑)。高校生だから注目されるっていうプラスもあるけど、やっぱりハードですねぇ」
学校では学級委員長も務めた「陽キャ」
スターダム道場での練習にも、学校が終わってから通う。道場に行けない時は家の近くで自主トレ。今回の防衛戦の前には期末試験もあった。高校生にとって2月はそういう時期なのだ。
「2日オールして」試験を乗り越え、大会に向け三姉妹で栃木県知事と下野市長を表敬訪問。土曜が群馬大会で日曜が栃木で防衛戦。確かにハードだ。
「でも普通の高校生にはできない経験ばっかさせてもらってるんで。同級生がガキっぽく見えたり、話が合わないこともあるんですけど。なんか高校生の話題についていけなくて(笑)」
学校では「陽キャ」で周りを引っ張るタイプ。学級委員長も務めたそうだ。修学旅行は大阪。実はその2週間後に大阪でタイトルマッチがあった。
「高校生として経験できることは全部、経験したい。“試合があるから修学旅行は行けない”とかは絶対イヤですね」