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学級委員長も務めた「高校生レスラー」 吏南(17歳)がタイトル戦で見せた“肩書き以上の可能性”…来春の卒業後はプロレス専念へ
posted2024/03/08 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
2月25日、スターダムの栃木・宇都宮大会で、新鋭選手(デビュー3年もしくは20歳以下が対象)の王座であるフューチャー・オブ・スターダムの選手権試合が行われた。
今のプロレス界では首都圏や5大都市でのタイトルマッチが主流。栃木では珍しいマッチメイクとなったが、チャンピオンの“ピンク・デビル”吏南は栃木県下野市出身・在住だ。地元の高校に通いながらプロレスラーとして活動している。
宇都宮大会での対戦を求めたのは挑戦者の天咲光由。デビュー当時から“スターダムの超新星”と呼ばれ将来を嘱望されてきた。フューチャー王座挑戦はデビューした2022年の8月以来。その時に対戦したのは吏南の姉で2代前のチャンピオン、羽南だった。
それから1年半、じっくり実力を蓄えての王座戦だ。天咲というリングネームの由来は「スターダムのてっぺんに咲く」という目標から。フューチャー王座はそのための大事な一歩になる。6人タッグ戦で吏南から直接フォール勝ちした勢いもあって、天咲はチャンピオンの地元凱旋マッチでのベルト奪取を狙った。
11歳でのプロレスデビューから6年
もちろん、吏南としても地元・栃木でのタイトルマッチは大歓迎だ。目標は羽南が持つ最多防衛記録(10回)の更新。天咲は次期王者の大本命とも言える存在だが、17歳のチャンピオンは自信満々だった。
小学2年生でプロレスの練習を始め、姉の羽南に続いてデビューしたのは2018年。11歳の時だ。対戦相手は双子の妹、妃南だった。
キッズレスラーのイメージが強かったが、ヒールユニット「大江戸隊」加入で成長が加速した。反則を止めるレフェリーを「クソジジイ!」と罵り、相手選手には「クソババア!」。15歳の時に19歳のAZMを「ババア」呼ばわりしてセコンドの鹿島沙希を苦笑させたこともある。
フューチャー王座を獲得してからは、試合ぶりがさらに充実。挑戦者の攻撃をしっかり受け、気持ちを引き出した上で勝つ闘いはチャンピオンらしい堂々としたものだ。
「ベルトを巻いて成長した部分はあると思います。でも、私は最初からできると思ってましたよ。会社が吏南の才能に気づけてなかっただけで。今はフューチャーの歴代チャンピオンよりも(タイトル戦線を)面白くできてると胸張って言えますね」