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「残り2%が圧倒的な差に」“大穴”FC町田ゼルビアはなぜJ1昇格できたのか? 藤田晋社長が語る“名将”黒田剛の手腕「いずれは世界に…」 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byJ.LEAGUE

posted2023/12/29 17:01

「残り2%が圧倒的な差に」“大穴”FC町田ゼルビアはなぜJ1昇格できたのか? 藤田晋社長が語る“名将”黒田剛の手腕「いずれは世界に…」<Number Web> photograph by J.LEAGUE

2位に勝ち点12差をつけJ2優勝とJ1昇格を果たしたFC町田ゼルビア。藤田晋社長がその真相を明かした

「またどこかのJクラブでやっていた監督を連れてきたところで、(他クラブとの)競争力は上がらない。そんなときに黒田監督が候補に挙がってきたので即決しました。優秀なマネージャーというのは結果を出している人。実績を見たら、それはもう明らかじゃないですか。(高校の監督が)Jで成功している前例がないといっても、別にいくつもサンプルがあるわけでもないので」

 藤田はもとより勝負師だ。サイバーエージェントの事業を大きくした経営者は麻雀もプロ顔負けの腕前であり、立ち上げたMリーグも成功させている。勝負師の勘として、1年目に全精力を注ぐことを公言する。

「黒田監督も1年目で結果が出ないと、高校サッカーの監督はJで通用しないという評価になりかねない。自分(に対する評価)だってそうです。どの選手をスカウトするかに口は出しません。僕としては予算を増やして勝負する。最初に黒田監督とフットボールダイレクターの原(靖)さんと話をして、こういうふうにやっていこうと3人できちんと意思統一しました」

新戦力で大幅にチーム入れ替え

 開幕前、19人の新戦力を取り込んで大幅にチームの入れ替えを図った。そのうえブラジル人FWのエリキを“アディショナル予算”で獲得。'19年に横浜F・マリノスのJ1制覇に貢献した実績を買い、強化部から相談を受けるとすぐにGOサインを出している。これこそが必要としたスケール感、スピード感。エリキはチームトップの18得点を叩き出し、首位快走の立役者となる。

 藤田には苦い経験がある。'06年に東京ヴェルディの経営に参画したものの、筆頭株主ではなかったことでイニシアチブを取れずわずか2年で撤退している。

「負けるとみんな誰かのせいにしたがるし、足並みがそろいづらかった。そのときの経験もあって(トップには)言うことを聞かせる存在が必要だと思い、だから僕がわざわざ社長に就いた。黒田監督がリーダーシップを取りやすいようにし、僕も絶対的に支持する。そうすることで足並みを乱すような隙を外に与えませんでした」

残り2%が圧倒的な差になる

 揺るがない組織と揺るがないチームが合致すると、とてつもないパワーを発揮するものだ。開幕戦こそ引き分けたが、その後6連勝をマーク。勝負に徹した堅守速攻スタイルを引っさげ、第10節(4月16日)以降は首位を一度も譲っていない。

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