Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER

「残り2%が圧倒的な差に」“大穴”FC町田ゼルビアはなぜJ1昇格できたのか? 藤田晋社長が語る“名将”黒田剛の手腕「いずれは世界に…」 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byJ.LEAGUE

posted2023/12/29 17:01

「残り2%が圧倒的な差に」“大穴”FC町田ゼルビアはなぜJ1昇格できたのか? 藤田晋社長が語る“名将”黒田剛の手腕「いずれは世界に…」<Number Web> photograph by J.LEAGUE

2位に勝ち点12差をつけJ2優勝とJ1昇格を果たしたFC町田ゼルビア。藤田晋社長がその真相を明かした

「チームに足りなかったのが勝者のメンタリティー。最後まであきらめずに走るとかあと一歩足を出すとか、そういうところで差がつく。ビジネスもそうで、98%まで差はあまりつきませんが、残りの2%で圧倒的な差になる。最後の2%の頑張りを引き出していたのが監督のマネジメントでした。

 毎試合、ここだけは絶対に負けられないと選手たちに言うわけです。手を替え品を替え、あるいは言葉を変えて頑張らせ続ける。これは経営者も同じで今月が勝負、この四半期が勝負って言い続ける。組織コンディションって山の天気のように変わりやすい。そのなかで高いモチベーションを保っていくというのは簡単じゃない。黒田監督は語彙が豊富なうえに分かりやすく選手に伝えていて、いつも感心して見ていました」

 危機に立たされたこともあった。エースのエリキが8月19日の清水エスパルス戦で左ひざ前十字靭帯断裂の大ケガを負い、かつ2点のリードを守れずに逆転負けを喫した。これをきっかけにガタガタと崩れてもおかしくはない。だがチームは次節のモンテディオ山形戦で5-0の快勝。たくましさを感じ取るゲームにもなった。

 藤田は賭けに勝った。社長就任1年目で公約どおりJ2優勝を果たすことができた。

 楽天グループを率い、J1初制覇を果たしたヴィッセル神戸の三木谷浩史会長からかつて「サッカークラブにだけは手を出さないほうがいい」とアドバイスを受けたことがある。サッカー好きもあって結局は手を出すことになったが、三木谷の言った意味は理解できた。

「あのときは途方にくれましたね(笑)」

 '19年には「FC町田トウキョウ」に名称を変更しようとしたものの、サポーターの猛反発にあって取り下げている。名称変更は経営権取得に際しての契約条項であり、世界にアピールしていくための策としてクラブにも相談したうえで進めていただけに、猛バッシングは身にこたえた。

【次ページ】 「あのときは途方にくれましたね(笑)」

BACK 1 2 3 4 NEXT
藤田晋
FC町田ゼルビア
サイバーエージェント
青森山田高校
黒田剛
エリキ
東京ヴェルディ
三木谷浩史

Jリーグの前後の記事

ページトップ