甲子園の風BACK NUMBER

「パワーじゃ勝てんのじゃけぇ」“佐々木麟太郎外し”に3連続バント…高校日本代表を世界一に導いた馬淵史郎の信念「わしゃ、アルミは好かん」 

text by

安藤嘉浩

安藤嘉浩Yoshihiro Ando

PROFILE

photograph byJIJI PRESS

posted2023/10/04 17:02

「パワーじゃ勝てんのじゃけぇ」“佐々木麟太郎外し”に3連続バント…高校日本代表を世界一に導いた馬淵史郎の信念「わしゃ、アルミは好かん」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

U-18ワールドカップで高校日本代表を率いた馬淵史郎監督(明徳義塾)。世界を相手に“馬淵流”の「打てなくても勝てる野球」を貫いた

一発攻勢に屈してボヤキ「アルミは好かん」

 日本が国際大会で勝てない最大の理由のひとつとされる木製バットも、ひとつのポイントかもしれない。

「わしゃ、アルミは好かん」

 馬淵史郎監督が、苦々しい表情でつぶやいたのは、2019年夏だった。

 第101回全国高校野球選手権大会の2回戦で、明徳義塾は智弁和歌山に逆転負けを喫した。5回に1点を先行したものの、7回に一挙7失点。強打の智弁和歌山に、この回だけで3本塁打を浴びた結果だった。

 3季ぶりと明徳にしては珍しくブランクが空いての甲子園。左腕の新地智也を制球力抜群のエースに育て、自信をもって臨んだ夏だった。

 そのエースが、甲子園特有のはま風の影響もあったとはいえ、1イニング3本塁打で沈んでしまった。

 よほど悔しかったのだろう。馬淵監督の愚痴の矛先は、金属製バットにまで及んだ。

「キン、キン、うるさいのお。あんなんで(スタンドに)入ってしまうんやから」

「わしゃ、アルミ(金属製バット)は好かん。1点をどうとるか、どうしのぐか。そこが野球の魅力やと思うんやがね」

 馬淵監督は「短剣」と「長剣」という比喩もよく使う。短剣(弱者)でも勇気をもって一歩踏み出せば、長剣(強者)に勝てるというのが、自身の信念だからだ。

「そやけど、あんな飛び道具(金属製バット)を使われたら、どうにもならん」

 その金属製バットに慣れ親しんだ日本の高校球児が、短期間で木製バットを使いこなすのは難しい。まして、長打や本塁打は期待できない。

 それなら、まず投手を中心とした守りをしっかり固める。攻撃陣は1、3番タイプをそろえ、シングルヒットや四死球で出塁し、バントや盗塁、ヒットエンドランで相手を揺さぶる。いわゆる「スモールベースボール」を徹底した。

【次ページ】 “新基準”を追い風に、再び優勝旗を目指す

BACK 1 2 3 NEXT
#馬淵史郎
#明徳義塾高校
#佐々木麟太郎
#真鍋慧
#智弁和歌山高校
#新地智也

高校野球の前後の記事

ページトップ