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甲子園の風BACK NUMBER
「パワーじゃ勝てんのじゃけぇ」“佐々木麟太郎外し”に3連続バント…高校日本代表を世界一に導いた馬淵史郎の信念「わしゃ、アルミは好かん」
text by
安藤嘉浩Yoshihiro Ando
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/04 17:02
U-18ワールドカップで高校日本代表を率いた馬淵史郎監督(明徳義塾)。世界を相手に“馬淵流”の「打てなくても勝てる野球」を貫いた
「いろんなやり方があるんでしょうけど、私が監督ではそれしかできないので。そういう選手を選んでやった。結果的にいい結果が出て本当に良かったと思います」
優勝インタビューでそう語る馬淵監督の感慨深そうな表情が印象的だった。
また勝てなければ、批判される危険性もあっただろう。実際、大会前には長距離打者不在の選手選考に疑問を呈する声も聞かれた。
それでも、自分の信念を曲げず、貫き通す強さが、馬淵監督にはあった。
“新基準”を追い風に、再び優勝旗を目指す
「世界一になったんでね。今度は日本の旗(優勝旗)を、もういっぺんとりにいきたい」
大会後、馬淵監督はそう語ったと聞く。67歳、まだまだお元気だ。
もちろん、なんの根拠もなく、高い目標を口にする人ではない。自信の裏づけになっているのは、「アルミ」ではないだろうか。
高校野球では来年のシーズンインから、金属製バットの基準が変わる。打球が速すぎて危険だという意見を踏まえて、反発性能が抑制され、太さ(最大直径)も67ミリから64ミリ未満まで細くなる。
「新しいバットは飛ばんよ。鉄の棒を振っているみたいと、うちの選手が言うとった。あれなら、900グラム以上という重量制限がある金属より、木製バットを使いたいと言う選手もおる」
おそらく、高校野球は変わる。馬淵監督の野球が、再び大輪の花を咲かせる可能性は高まりそうだ。
<前編から続く>