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横浜高“あの悲劇の天才ショート”緒方漣がいま明かす神奈川大会決勝「1週間ぐらい家から出られませんでした」絶望のち歓喜「緒方、受かったぞ!」
posted2023/10/13 11:02
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kei Nakamura
いま明かす「あの決勝」
――U-18ワールドカップの決勝、台湾戦は、最後の打球はセカンドの緒方君が処理し、2-1で逃げ切りました。どんな思いが頭を過ぎりましたか。
緒方 今までにない感覚というか……。どん底から世界一になれたので、ほんとに報われたな、と。やってきてよかったなと思いましたね。あのときは、(アウトは)1つずつだぞ、1つずつだぞって、ずっと言い聞かせてたんです。慶応戦のこともあったので。
――この夏は、本当に「どん底」からの栄冠でしたよね。思えば、夏の神奈川大会の決勝は、横浜サイドからすれば、衝撃的な敗退となりました。5-3のリードで迎えた9回表、ノーアウト一塁から、セカンドゴロでゲッツーかと思われましたが、ショートの緒方君が二塁を踏みに行ったものの、塁審に踏んでいないとジャッジされ、さらに一塁もセーフとなりノーアウト一、二塁。そこから慶応に逆転3ランを浴びてしまいました。
緒方 二塁も一塁もセーフとなった瞬間、球場のボルテージがMAXになって。これはヤバいな、というのがありました。
――甲子園でも慶応の大応援は話題になりましたが、同じ県なので、ある程度、慣れてはいたのですか。
緒方 いや、3年間で慶応と対戦したのは2年秋と3年夏の決勝だけで。秋は確か、両チームとも吹奏楽部は入っていなかったんです。だから、あの雰囲気を味わったのは夏が初めてで。正直、あそこまですごいとは思いませんでした。たぶん応援してくれている人数だけでいったら横浜の方が多かったので、声は負けていなかったと思うんです。でも、9回のときは、もう止められない感じになっていました。
――あのときの記憶はどれくらい残っているものなのですか。