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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
大谷翔平とエンゼルスの関係は健全なのか? 記者が目にしたクラブハウスでの“ある事件”「いきなりロッカーが空に」「釈然としない説明」
posted2023/09/23 17:03
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph by
Getty Images
「大谷と球団のバランスは、いつの間にか釣り合わなくなっていた」――打者として打率.304、44本塁打、95打点。投手として防御率3.14、10勝5敗、167奪三振。MLBの歴史に残る大谷翔平の伝説的なシーズンは、右肘の負傷によって幕を閉じた。その過程で番記者が目にした、大谷とエンゼルスの“すれ違い”とは。「世界一の選手」と9年連続でプレーオフを逃した球団は、果たして対等なコミュニケーションをとれていたのか。激動のシーズンの裏側に迫った。(全2回の1回目/後編へ)
広報から転送された「代理人の声明文」
9月19日、14時37分。エンゼルスの広報担当者から1通のメールが届いた。正確にいえば、大谷翔平の代理人ネズ・バレロ氏の声明文が転送された。
文面には大谷が19日朝に右肘の手術を成功させたことと、執刀した医師ニール・エラトロッシュ氏のコメントが記されていた。
そして、エンゼルス側は文末にわずか2行、「翔平は休んでいて元気で、回復の道を歩んでいることに興奮している」と添えただけだった。
代理人主導の発表に、どこか違和感を覚えた。
歯切れが悪かったGMの会見
3日前、9月16日。エンゼルスが、大谷の負傷者リスト入りと残りシーズンの全休を発表し、歴史的なシーズンの幕は突然、閉じられた。
その日の13時45分。ペリー・ミナシアンGMが事情を説明するために会見場に姿を見せた。5分ほど早く着いたミナシアンGMは水を口に含みながら、馴染みの記者と軽妙なやり取りをした。
だが、会見が始まると、その言葉選びはかなり慎重で、歯切れは悪かった。
会見の冒頭。「Surgery(手術)」という言葉を使いかけ、慌てて「Procedure(治療行為)」と言い直した。
大谷サイドへの配慮がにじんだ。9月4日に行われた大谷の代理人のバレロ氏の会見でも、一度も「Surgery」とは言わず、「Procedure」という言葉を使っていた。メスを入れるというネガティブな想起をさせないためか、どんな意図があるのか分からないが、代理人は手術の詳細を明かそうとしない。