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「藤井聡太七冠との対局後、羽生善治新会長が深夜に…」申請殺到! 将棋アマ免状は「長嶋茂雄、アントニオ猪木にも」田丸昇九段が知る“マメ知識”
posted2023/07/12 17:20
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Keiji Ishikawa/JIJI PRESS
6月1日に藤井聡太新名人(20=竜王・王位・叡王・棋王・王将・棋聖を合わせて七冠)が誕生し、新しい公式の肩書は「竜王・名人」となった。また、6月9日に日本将棋連盟の通常総会で羽生善治九段(52)が新会長に就任した。
その結果、将棋連盟が発行する「免状」は羽生・藤井のダブル署名となり、将棋ファンの人気を呼んで免状の申請数が激増しているという。免状の意義、文章、歴史、エピソードなどについて、田丸昇九段が解説する。【文中敬称略】
初段の免状に記された文章の意味とは
日本将棋連盟が発行するアマチュア向けの正式免状は、「段位を公認する証し」として申請者に授与される。
写真のように、本人の氏名、段位ごとの文章、発行年月日は毛筆による手書きで、日本将棋連盟の会長(羽生善治)、名人、竜王(いずれも藤井聡太)の署名は自筆である。手すき和紙の大高檀紙に書かれた免状は気品と風格が溢れていて、取得者にはよい記念として珍重されている。
将棋の免状の文章は、将棋を愛好した作家の瀧井孝作が1950年代の頃に将棋連盟から依頼され、熟慮と推敲を重ねて格調の高い文章を、初段から九段までそれぞれ撰文した。
初段の免状の文章は、「夙ニ将棋ニ 丹念ニシテ 研鑽怠ラス 進歩顕著ナルヲ認メ 茲ニ初段ヲ允許ス」。
その意味は、日頃から将棋に真心を込め、研究を怠らないで進歩が著しいことを認め、ここに初段を許可する。
二段から四段までの免状の文章は、四段落で「進境顕著ナルヲ」「上達明ラカナルヲ」「練達ニ長ケタルヲ」など、文言が少し異なる。
プロとアマの免状では、違いが2点ある
プロ棋士も昇段するごとに免状を授与される。その文章はアマチュア向けの免状と同じである。
私こと田丸昇は、2013年(平成25)4月1日付で九段に昇段した。写真は、実物の免状。
九段の免状の文章は、「夙ニ将棋ニ 天賦ノ資有 蘊奥ヲ極メ 明哲ノ師宗 ナルニ依而 茲ニ九段ニ推ス」。
その意味は、早くから将棋に才能の素質があり、将棋の奥義を極め、聡明な師として尊ぶによって、ここに九段に推薦する。私は、将棋の奥義を極めた実力はないが、将棋の文化面に造詣が深い棋士として、評価されたいと思っている。
プロとアマの免状では、違いが2点ある。アマは「〇〇△△殿」と敬称がつくが、プロは「棋士 田丸昇」と氏名のみ。また、アマは将棋連盟会長、名人、竜王の棋士の署名が入るが、プロは連盟会長の署名だけ。